京都で定年後生活

2013年3月60歳で定年退職。

美術館と庭園めぐり、京都の四季の行事と花を綴ります。

京町屋 中京(7)仲邸、近又、堺町画廊、室町和久傳、うずらギャラリー、Paul Smith、にじゆら

2019-09-04 16:41:44 | 京都の町 町屋・建造物


京町屋中京区の続き、第7回です。

仲家
登録有形文化財
中京区室町通御池上る御池之町
大正/1916頃 木造2階建、瓦葺、建築面積106㎡、正面高塀付
室町通の東側に位置し,通りに面して建つ高塀の奥に座敷を繋げるいわゆる高塀造の町家です。
高塀に接して平屋の応接間,その奥に2階建,通り土間をもつ居室部を配しています。
島原角屋(重要文化財)を参考にしたといい,座敷飾りや窓回りの随所に凝った意匠が見られます。










近又
登録有形文化財
中京区御幸町通四条上る大日町
明治/1868-1911 木造2階建、瓦葺、建築面積110㎡
近江出身の近江屋又八が創業した商人宿。近又は屋号で,明治36年頃に現在地に移りました。
御幸町通に東面して建つ2階建・平入・桟瓦葺の町家建築で,1階北半と2階に客室を設けています。
数寄屋風の意匠でまとめられ,床や棚,窓,欄間など変化に富んだ造形を持っています。


































伏原邸(堺町画廊)
景観重要建造物、歴史的風致形成建造物、歴史的意匠建造物
中京区 堺町通姉小路上る丸木材木町






















後日





旧石川家(和久傳堺町店)
京都を彩る建造物選定第6-008号
中京区
木造平入総2階の間口が広い町家です。
腰壁に金属性のパイプ格子を備えた昭和初期の町家の特徴を備え,2階の虫籠窓や軒から簾がかかる外観は,姉小路界隈の景観の重要な要素となっています。














うずらギャラリー(旧富田歯科医院)





以下の二軒は町屋を改造した店舗です。

Paul Smith





にじゆら







京町屋外観の特徴
屋根一階庇の最前列は一文字瓦葺いています。
横の一直線と格子の縦の線の調合が町屋の外観美の一つです。

格子は戦国時代からで、内からは外がよく見え、外からはよく見えないようになっています。
家の商いや家主の好みでデザインが異なります。
上部が切り取られた「糸屋格子」、太い連子の「麩屋格子」、「炭屋格子」、重い酒樽や米俵を扱う「酒屋格子」、「米屋格子」、繊細な「仕舞屋格子」などがあります。格子を紅殻で塗ったものが紅殻格子。

ばったり床几は元々は商いの品を並べるもので、後に腰掛け用に床几として近隣との語らいの場でした。ばったりとは棚を上げ下げするときの音からきています。

虫籠窓は表に面した二階が低くなっている「厨子二階」に多く見られる意匠。
防火と道行く人を見下ろさない配慮と言われています。

犬矢来
竹の犬矢来は割竹を透き間なく組んだものから、少し透かしたものまでさなざまです。
直線的な町屋の表情を和らげてくれます。

駒寄
家と道との境界に巡らされた格子の垣。元は牛馬をつなぐためのものでした。
意匠もさまざま、栗や欅などの硬い木が使われることもあります。

鍾馗
厄除けの瓦人形は京町屋の屋根の象徴です。


各種建造物指定の説明

国・登録有形文化財
緩やかな規制により建造物を活用しながら保存を図るため,平成8年度施行の文化財制度で,登録された建物が登録有形文化財です。
登録文化財には,築後50年を経過している建造物で,国土の歴史的景観に寄与しているもの、造形の規範となっているもの、再現することが容易でないものといった基準を満たす建造物が対象となります。
京都市では,近代の建造物を中心に積極的に登録を進め,市内243件(平成31年1月末現在告示分)が登録されています。

景観重要建造物
 平成16年に制定された景観法に基づき,地域の自然,歴史,文化等からみて,建造物の外観が景観上の特徴を有し,地域の景観形成に重要なものについて,京都市長が当該建造物の所有者の意見を聞いて指定を行う制度です。
指定を受けた建造物には,所有者等の適正な管理義務のほか,増築や改築,外観等の変更には市長の許可が必要となりますが,相続税に係る適正評価や,建造物の外観の修理・修景に係る補助制度が活用できます。

歴史的意匠建造物
 歴史的な意匠を有し、地域の景観のシンボル的な役割を果たしている建築物等を京都市が指定するものです。

歴史的風致形成建造物
 平成20年11月に施行された、歴史まちづくり法に記載された重点区域内の歴史的な建造物で,地域の歴史的風致を形成し,歴史的風致の維持及び向上のために保存を図る必要があると認められるもので,京都市長が建造物の所有者及び教育委員会の意見を聞いて指定した建造物。
指定を受けた建造物には,所有者等の適切な管理義務のほか,増築や改築,移転又は除却の届出が必要となりますが,建造物の外観の修理・修景に係る補助制度が活用できます。






百花繚乱(4)葛飾北斎、歌川広重、葡萄芒蒔絵硯箱、武蔵野図屏風

2019-09-04 05:45:53 | 美術・博物館


百花繚乱ニッポンXビジュツ展の最後です。

6章 富士山
富士山はその圧倒的な存在感で、古くから人々を惹きつけてきました。
名所絵としてあるいは富士信仰の対象として、日本美術のなかでもしばしば描かれています。江戸後期に大胆な構図や遠近法を用いた葛飾北斎の「冨嶽三十六景」、諸国を旅して実地のスケッチを重ねた歌川広重の「東海道五十三次」などが出版され、大変な人気を博します。
特に北斎が夏の赤富士を描いた「凱風快晴」や「山下白雨」、荒れ狂う大波と富士を描いた「神奈川沖浪裏」は、日本を代表する美術作品といえます。


武蔵野図屏風
作者不詳 江戸時代前期(17世紀) 紙本金地着色 屏風装(六曲一双)
武蔵野図は江戸の西部に広がる武蔵野の原野を描いたものです。
「武藏野は月の入るべき山もなし、草より出でて草にこそ入れ」との和歌の趣旨に従い、一面を無数の秋草で埋めつくし、左隻に雲上の富士を、右隻に草の間に沈む月を描いています。









葡萄芒蒔絵硯箱
江戸時代中期(18世紀) 木製漆塗
この硯箱の蓋表には葡萄が、蓋裏には蓋裏は、鉛の金貝であらわした月が、芒の群れとともに表現され、散らされた梨子地の蒔絵を背景にして秋の詩情を奏でています。
武蔵野図の絵画世界を硯箱という工芸品に凝縮したような作品です。






冨嶽三十六景 山下白雨
葛飾北斎 宝暦10(1760)-嘉永2(1849)
天保1−天保3年(1830-32)頃 木版多色刷 横大判錦絵
漆黒に包まれた裾野から山頂へのシャープなグラディエーションと頂の尖った形容が、富士の峻厳さとその周辺に立ちこめる静寂な雰囲気を伝えています。
「白雨」とは夕立を意味します。
裾野に描かれた稲光りが画面全体にいっそう鋭さを与えるとともに奥より迫る黒く染まった雨雲が、これから来るであろう俄雨を予兆します。

冨嶽三十六景シリーズの三役にも挙げられる作品で、《凱風快晴》と双璧をなすように、富士の堂々たる姿を表した本図は、《凱風快晴》が「赤富士」と称されたのに対し「黒富士」と呼ばれています。










冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏
葛飾北斎 宝暦10(1760)-嘉永2(1849)
天保1−天保3年(1830-32)頃 木版多色刷 横大判錦絵
眼前で激しく逆巻く大波と波間の遥か遠くに鎮座する富士山。
動と静、遠と近を対比させる絶妙な構図は、海外でも人気で、画家ゴッホや作曲家ドビュッシーをはじめ世界的に賞讃を受けました。
波に翻弄される3艘の千葉県木更津方面から江戸湾を臨んで描いたとの説もあります。









冨嶽三十六景 凱風快晴
葛飾北斎 宝暦10(1760)-嘉永2(1849)
天保1−天保3年(1830-32)頃 木版多色刷 横大判錦絵
冨嶽三十六景シリーズを代表する作品です。
画題にある「凱風」とは南風のことです。
「赤富士」とも称されるこの情景は、夏から秋にかけての早朝にかぎり見られるといいます。
秋を予感させる鰯雲の中に悠然とそびえるその偉容は、富士を形象化した作品の中でも唯一無二の逸品です。










名所江戸百景 水道橋駿河台
歌川広重 寛政9(1797)-安政5(1858)
安政4年(1857) 木版多色刷 大判錦絵
本郷台地から神田川に架かる水道橋越しに駿河台の町を見下ろしている構図です。
端午の節句の大きな鯉のぼりが手前にくの字に曲がって翻っています。
奥に広がる屋敷の方々で吹き流しや幟旗、魔除けの鍾馗の幟が見られます。
遠景には5月の澄み切った富士の姿が見えます。





東海道五拾三次之内 原 朝之富士
歌川広重 寛政9(1797)-安政5(1858)
天保4-5年(1833-34) 木版多色刷 横大判錦絵
現在の静岡県沼津市です。
母娘でしょうか、2人の女性とお供の男性がいます。
その背後には、朝焼けをバックに雪を被る雄大な富士がそびえており、女性たちはその偉容に思わず足を止めています。
富士の頂が画面をはみ出すように描かれた斬新な構図です。