百花繚乱の続きです。
4章 黄金の国
日本美術といえば「金」のイメージがあります。
絵画では金箔や金泥を用いた金屏風、工芸では金を贅沢に使った蒔絵装飾が有名です。
古来から金の魅力は日本人の心をとらえ、とりわけ鎌倉時代以降、貴族や武士の生活を飾る美術工芸品に金が多用されました。
絵画の装飾や、物語図の場面を仕切る金雲などにも金は多用されました。
ここではこれらの屏風が制作された当時、室内の灯明の光で鑑賞した際に、光を反射する金の輝きが絵画の鑑賞に与えた効果を感じることができます。
洛中洛外図屏風
狩野派 江戸時代前期(17世紀) 紙本金地着色 屏風装(六曲一双)
京都の市街(洛中)と郊外(洛外)の名所や旧跡、四季折々の行事などを金雲たなびく眼下一望のもとに描いた風俗画です。
左隻の中央に大きく二条城が描かれ、右隻には豊臣の余光を反映して方広寺の大仏殿が描かれています。
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源氏物語図屏風
岩佐派 江戸時代前期(17世紀) 紙本金地着色 屏風装(六曲一双)
『源氏物語』は中世、近世を通じて、様々な画派によって描かれ、日本絵画の普遍的・古典的テ−マとして親しまれました。
本作は江戸前期に活躍した岩佐又兵衛の作風に近く、画面を金雲や塀で区分し、源氏物語五十四帖から選ばれた、「桐壺」「明石」など計12場面を配描いています。
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桐鳳凰蒔絵硯箱
桃山-江戸時代(17世紀) 木製漆塗
金梨子地に蓋表には桐に鳳凰、見返しに松瀧山水、見込みに竹を表した硯箱です。
桐竹鳳凰は天子を表す吉祥文として好まれ、絵画や図様の特徴により桃山期から江戸初期頃見られる貴重な作例です。
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[重要美術品]鹿秋草蒔絵硯箱
五十嵐派 江戸時代(17-18世紀) 木製漆塗
『古今和歌集』に収められた壬生忠岑の和歌「山里は秋こそことにわびしけれ 鹿の鳴く音に目をさましつつ」の歌意表したデザインです。
蓋表には四頭の鹿と菊、萩などの秋の草花が配され。その図様は蓋裏から蓋表、身の方へと連続しています。
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竹雀紋竪三引両紋牡丹唐草蒔絵女乗物
順姫所用 江戸時代中期(18世紀)
駕籠の中でも引き戸が付いている高級なものを乗物と呼びます。
宇和島伊達家の家紋である「竹に雀紋」と「竪三引両紋」が描かれ、仙台藩第7代藩主伊達重村の娘順姫が伊予宇和島藩第6代藩主伊達村壽に嫁いだ際に用いられた品と考えられています。
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葵紋牡丹紋二葉葵唐草蒔絵茶碗台 同蓋
天璋院篤姫の婚礼調度 江戸時代後期(19世紀) 木製漆塗
天璋院篤姫の婚礼調度の一部で、陶磁器製の茶碗をのせる台、および蓋です。
篤姫の婚礼調度品はこれまで国内外で4件しか確認されていない希少なものです。
近衛家の抱き牡丹紋、徳川家の三葉葵紋を配し、二葉葵唐草の意匠が施されています。
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5章 四季
季節の表現は日本美術の大きなウェイトを占めています。
古くは平安時代から、自然描写と相まって季節を描くことは広く行われ、とりわけ大画面の屏風では、六曲一双の向かって右側に「春→夏」を、左側に「秋→冬」を描くことが通例となりました。
絵画・工芸など幅広いジャンルで、貴族や武士、そして庶民に至るまで人気の画題でした。
四季の表現には、季節を表す動植物や情景などが用いられますが、その描写の発展には中国絵画の影響も見られます。
春秋草花図屏風
伊年 印 江戸時代前期(17世紀) 紙本金地着色 屏風装(二曲一隻)
画面左下に俵屋宗達が主宰した工房作を示す「伊年印」が付されています。
二曲仕立ての屏風には女竹・蔦・もろこし・芥子・すみれ・桜草・つくし・立葵・竜胆・燕子花・撫子・たんぽぽ・鶏頭・芒・萩など十数種の草花を散見することができます。
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吉野山龍田川図屏風
狩野派 江戸時代前期(17世紀) 紙本着色 屏風装(六曲一双)
な狩野派様式を、狩野探幽は「景物画」と呼ばれる日本の名所における四季や風俗を主題とした新しい絵画の領域を開拓しました。
本作で描かれる吉野山の桜、龍田川の紅葉は、春秋の季節を代表する景物として和歌にも詠まれ、古来より親しまれてきた伝統的画題の一つです。
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四季山水図屏風
狩野常信 寛永13(1636)-正徳3(1713)
江戸時代前期(17世紀) 紙本墨画 屏風装(六曲一双)
江戸狩野の継承者として活躍した常信が描いた水墨山水で、右隻から左隻へと春夏秋冬の季節の移り変わりを描いた四季山水図です。
こうした「四季山水図」は中国より伝来した「瀟湘八景図」に由来しています。
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蘭亭脩契図
呉春(松村月渓) 宝暦2(1752)-文化8(1811)
天明2-寛政1年(1782-89)頃 絹本着色 軸装
王羲之が蘭亭に文雅の士41人と集まり、作詩した故事を描きます。
流水に盃を流して、前を過ぎないうちに詩作する文士たちに見えますが、屋内の筆を手にする人物が王羲之でしょうか。
呉春が30歳代に摂津池田時代に描いた大作です。
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青緑山水図
谷文晁 宝暦13(1763)-天保11(1840)
文政5年(1822) 絹本着色 軸装
深山幽谷の蜀の桟道を描いた大作です。
岩山を描いた墨の線に文晁が取り入れた北宗画的な特徴がうかがえます。
山道を行く人馬の周囲には群青、緑青、代赭などで彩られた木々が描かれ、画面に温かみを加えています。
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