京都で定年後生活

2013年3月60歳で定年退職。

美術館と庭園めぐり、京都の四季の行事と花を綴ります。

京の町屋中京(13)釜座町 町家、京乃たまや、亀末廣、八百三、平楽時書店、炭屋旅館

2019-09-14 16:11:13 | 京都の町 町屋・建造物


京町屋中京区の続き、第13回です。

釜座町 町家
京都を彩る建造物選定番号第2-012号
中規模で典型的な京町家です。
町内会の持ち物として,会合や地蔵盆に使用されてきました。
国内外の支援団体と連携して改修し,再生されました。














援助を受けた米国財団





隣家京乃たまや









亀末廣
京都を彩る建造物選定番号第5-028号
文化元年創業の老舗の菓子屋です。
建物は創業当初からの外観を残す総2階桟瓦葺の主屋と、築100年以上の穀物用の蔵が姉小路通に建っています。






京名物百味会HPより
伏見醍醐の釜師であった初代・亀屋源助は、文化元年(1804)京の街に出て亀末廣を創業した。
江戸時代には徳川家が宿館とした二条城に、また都が東京に遷るまでは、御所にも菓子を納める老舗となった。
御所や二条城からの菓子の注文は、新たに特別注文されるのが通例で、そのたびに木型師が専用の木型をつくっていた。
一回だけ使って用済みとなった木型がたくさん残っていたことから、これを額の部分に用いたのが、老舗が並ぶ姉小路通の中でも一際目を引く「御菓子司亀末廣」の看板である。
四季折々の草花を巧みにデザイン化し、風味と色彩豊かな「干菓子」で表現する手法を創案したのは、三代目当主であるといわれる。
同店の代表菓子である干菓子の姿形や色彩は、そのまま俳句や和歌の素材にもなるような、風流を感じさせるものばかりである。
亀末廣を代表する商品として知られる「京のよすが」は、四畳半に区切った秋田杉の箱に、季節感あふれる干菓子や有平糖、半生菓子などが彩り良く詰め合わされたもの。
季節に応じて内容が変わるため、常連客は心をときめかせながら店を訪れるという。










八百三
京都を彩る建造物選定番号第6-028号
宝暦年間創業の柚味噌の老舗です。
総2階桟瓦葺で,格子,腰板を備えた外観は,当家から作り出される伝統の味とともに商家ととしての形が残されています。





京名物百味会HPより
愛石山の南西に嵯峨水尾と呼ばれる谷沿いの小さな集落がある。
水尾は古くから知られる柚子の産地であり、秋になると山の斜面に黄色い柚子の実がたわわに実る光景を見ることができる。
ここで収穫される上質の柚子を用いた「柚味噌」を専門に製造、販売しているのが、宝永五年(1708)創業と伝わる八百三である。
創業から大正時代まで、八百三は精進料理(仕出し)を生業とし、御所や智恩院をはじめとする社寺に出入りしていた。
独自の製法による柚味噌を創案したのは初代・八幡屋三四郎、以来精進料理には欠かせない調味料として、八百三の料理に使用されてきた。とやがて、京の名物として柚味噌の評判が高まり、需要も増加したことから、柚味噌を専門に商うようになった。
八百三の柚味噌は、一子相伝の製法によってつくられる。そのため、詳しいつくり方は明らかにされないが、柚子を味噌に合わせる際、さらに数種類に材料を調合することによって、独特の濃厚な香りや味が醸し出されるという。
滋養が高く、自然食品でもあることから、昔からの常連ばかりでなく、若い世代の需要も伸びつつある。
二百九十余年の歴史を越えて、柚味噌の魅力は衰えることを知らない。









平楽時書店
中京区東洞院三条上ル
仏教関係の学術書を扱う老舗出版社です。
京町屋ではないのですが、建て替え前の平楽寺書店は国登録有形文化財でした。
建築は1927,昭和2年、からきや工務店の設計施工です。
2~3階を貫くトスカナ式のジャイアントオーダーが外観の特徴でした。

建物の修復も検討されましたが、将来にわたってかかる維持・管理費が懸念材料となり解体されてしまいました。
通りのシンボル的な建物でしたが、とても残念です。
平楽時書店のように国の登録有形文化財でも、維持管理するのは大変なようで、同じく国登録有形文化財の同志社大学フレンド・ピース・ハウスも解体撤去されてしまいました。跡地は同志社幼稚園に建て替えられます。
京町屋はさらに厳しい環境です。

解体後の書店









解体前の書店(登録有形文化財)


















炭屋旅館
京都を彩る建造物認定番号第46号
中京区
大正の初めの創業で,茶道や謡曲を嗜む人たちのサロンとして愛された老舗旅館です。
老舗旅館が並び立つ麩屋町通に面し,間口の広い大塀は風格を示しており,その中央に位置する玄関門の土間には,為される打ち水で光線が反射し,塀の質感とは対照的な風情を醸し出しています。
洗月亭や残月亭と言った名のある茶室を写す宿泊室や裏千家第十四代淡々斎によって名付けられた茶室玉兎庵を有し,茶の精神を取り入れたもてなしを大事にするとともに,建築や庭に細部に至るまで数寄屋造りを意識しており,伝統と風格を備えた建築です。















京町屋外観の特徴
屋根一階庇の最前列は一文字瓦葺いています。
横の一直線と格子の縦の線の調合が町屋の外観美の一つです。
格子
戦国時代からで、内からは外がよく見え、外からはよく見えないようになっています。
家の商いや家主の好みでデザインが異なります。
上部が切り取られた「糸屋格子」、太い連子の「麩屋格子」、「炭屋格子」、重い酒樽や米俵を扱う「酒屋格子」、「米屋格子」、繊細な「仕舞屋格子」などがあります。格子を紅殻で塗ったものが紅殻格子。
ばったり床几
元々は商いの品を並べるもので、後に腰掛け用に床几として近隣との語らいの場でした。
ばったりとは棚を上げ下げするときの音からきています。
虫籠窓
表に面した二階が低くなっている「厨子二階」に多く見られる意匠。
防火と道行く人を見下ろさない配慮と言われています。
犬矢来
竹の犬矢来は割竹を透き間なく組んだものから、少し透かしたものまでさなざまです。
直線的な町屋の表情を和らげてくれます。
駒寄
家と道との境界に巡らされた格子の垣。元は牛馬をつなぐためのものでした。
意匠もさまざま、栗や欅などの硬い木が使われることもあります。
鍾馗
厄除けの瓦人形は京町屋の屋根の象徴です。


各種建造物指定の説明
国・登録有形文化財
緩やかな規制により建造物を活用しながら保存を図るため,平成8年度施行の文化財制度で,登録された建物が登録有形文化財です。
登録文化財には,築後50年を経過している建造物で,国土の歴史的景観に寄与しているもの、造形の規範となっているもの、再現することが容易でないものといった基準を満たす建造物が対象となります。
京都市では,近代の建造物を中心に積極的に登録を進め,市内243件(平成31年1月末現在告示分)が登録されています。

景観重要建造物
 平成16年に制定された景観法に基づき,地域の自然,歴史,文化等からみて,建造物の外観が景観上の特徴を有し,地域の景観形成に重要なものについて,京都市長が当該建造物の所有者の意見を聞いて指定を行う制度です。
指定を受けた建造物には,所有者等の適正な管理義務のほか,増築や改築,外観等の変更には市長の許可が必要となりますが,相続税に係る適正評価や,建造物の外観の修理・修景に係る補助制度が活用できます。

歴史的意匠建造物
 歴史的な意匠を有し、地域の景観のシンボル的な役割を果たしている建築物等を京都市が指定するものです。

歴史的風致形成建造物
 平成20年11月に施行された、歴史まちづくり法に記載された重点区域内の歴史的な建造物で,地域の歴史的風致を形成し,歴史的風致の維持及び向上のために保存を図る必要があると認められるもので,京都市長が建造物の所有者及び教育委員会の意見を聞いて指定した建造物。
指定を受けた建造物には,所有者等の適切な管理義務のほか,増築や改築,移転又は除却の届出が必要となりますが,建造物の外観の修理・修景に係る補助制度が活用できます。


京都を彩る建物
京都市内には京都の歴史や文化を象徴する建物が,所有者のたゆまぬ努力により,世代を越えて継承されています。
しかし,その存在と魅力が十分に伝わっていないものや,維持・継承が危ぶまれているものもあります。
そこで,京都の財産として残したい建物や市民から募集し,市民ぐるみで残そうという気運を高め,様々な活用を進めることなどにより,維持・継承を図ろうというものです。
京都を彩る建物は市民から推薦を受け、審査委員会で選定された建造物です。
京都市内で世代を越えて継承され,京都の歴史や文化を象徴し、概ね50年以上の建造物(国又は地方公共団体が所有しているものは除く)です。