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スペインの農業(スペインの旅-6)

2011-12-23 11:38:42 | ラテンアメリカ旅は道連れ<南米旅日記>

今回の旅で農村に立ち寄る機会はなかったが,移動中の車窓から農業の姿を眺めることができた。印象から判断すれば,観光に力を入れてはいるものの,スペインはやはり農業国だ。農業国で,しかも海に面しているため海産物も豊富で,何しろ食べ物が美味しい。イベリコ豚,バレンシアオレンジ,パエージャ,バルでの定番タパス・・・,誰もがこれらの食べ物からスペインを思い出すことだろう。

駆け足旅行の途中でも,レストランやバルでスペインワインを傾けながら疲れをいやす機会は多くある。旅から帰ってみると,旅先での食事が良い想い出になる。

 

例えば,マジョール広場からカバ・デ・サンミゲル通りに出て,メソン・デル・チャンピニオンを覗く。

 

「何を召し上がりますか?」

「そうだね,ハモン・イベリコ・ベジョータにチャンピニオン・ア・ラ・プランチャ,それとビノ・デ・カサ・・・」

 

近くのメソン・デ・ラ・トルテイジャにも梯子して,奥のボックス席に座る。

「トルテイジャ・パラ・ドス,ポルハボール,それに,プルポ・ガジェゴ・パラ・セニョーラ」

オルガン弾きが「北国の春」を奏でる。曲に合わせて歌うも良いだろう。

 

さて,スペインの農業概況であるが,農用地面積は,EUの中でフランスに次ぐ第2位の2,768ha(日本の6倍,なお国土面積は1.3倍),農業生産額はフランス,ドイツ,イタリアに次ぐ第4位で,農産が250億ユーロ,牧畜が140億ユーロほどである。

 

農業地帯は,大きく三つに分けられる。北部は比較的雨が多く夏は涼しく冬は温暖な海洋性気候で,麦類と畜産の生産が多い。中央部は昼夜の気温差が大きく夏は暑く冬は寒い大陸性気候で,麦類,ブドウ,畜産の生産が多い。東部および南部は一年を通し温暖で乾燥した地中海気候で,東部(カタルーニャ州,バレンシア州)では柑橘類や米,南部(アンダルシア州,ムルシア州)ではオリーブ,ブドウ,野菜,米等の生産が盛んである。

 

今回の旅で,私達を乗せたバスはバルセロナを出発する。カタルーニャからバレンシアへの道程では乾燥した麦畑と柑橘類が谷間に広がる(灌漑施設が目につく,灌漑農地は全体の20%という)。さらに,アンダルシアのセビージャからマドリッドに向かうと,コルドバを抜ける頃にはオリーブ畑が山肌を埋める。そして中央台地,ラマンチャに入れば荒涼とした風景が眺められる。

 

中でも,オリーブのプランテーションには圧倒される。立ち寄ったドライブインで,ついついバージンオイルとピクルスの瓶詰めを購入する。後々,重い荷物に閉口することになるが,これも旅の想い出というものだろう。オリーブは地中海沿岸が原産地とされ,葉が小さくて硬く,比較的乾燥に強いことから,生産は地中海沿岸諸国に集中しており,スペインが世界のトップで792万トンを産する。二位のイタリア328万トン,三位のギリシャ196万トンを大きく上回っている(FAOSTAT 2009)。

 

その他にも,生産量が世界上位に入る農産物が数多く,オリーブ(1位)のほか,タンジェリン・マンダリン(2位),いちご(3位),桃(4位),豚肉(4位),マッシュルーム(5位),ぶどう(5位)などである。日本ではスペインから,豚肉,ワイン,オリーブ油,かつお・まぐろ・たこ等海産物を輸入し,支払総額は300億円を越えている。

 

また,ラマンチャの特産品としてサフランが有名である。パエージャのあの黄金色の基である。サフラン(Crocus sativus L.)はクロッカス属で,観賞用の花サフランは日本各地で植えられているのでなじみが深い。サフランの「雌しべ」を乾燥させたものが香辛料として使われる。旅の想い出にとマドリッドのスーパーで小袋を購入したが,まだ台所の片隅に眠っている。

 

 

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