国際協力機構(JICA)の専門家として南米パラグアイの試験場で大豆育種技術協力に携わった。2000年から2008年にかけて3回派遣され,その期間は通算5年に及んだ。滞在中は,パラグアイの農業生産現場を歩き,またブラジル,アルゼンチンなど主要大豆生産国の研究機関や生産現場を訪れる機会も多かった。
この間,南米の大豆生産は拡大し続け,今や全世界の大豆生産量に占める南米3国(アルゼンチン,ブラジル,パラグアイ)のシェアは,米国の40%を抜き44%に達している。筆者が30年前にアルゼンチンで大豆育種に携わった頃の「南米大豆育種研究創始期」に比べれば,その姿は隔世の感がある。
最近の10年間をみると,南米大豆はGM大豆の拡がりを抜きには語れない。大豆生産の動向とGM大豆(グリホサート耐性)の現状について紹介しよう。
◆拡大著しい南米の大豆生産
世界の大豆生産量は年々増加し,2006年で22,150万トンに達した。国別にみると,1位が米国で8,767万トン,2位がブラジルで5,236万トン,3位がアルゼンチンで4,047万トン,そして4位中国,5位インド,6位パラグアイと続く。この中で,南米3国の生産量増加が著しい。
大豆生産増の要因は,①価格の優位性,②耕作地の拡大と国際競争力,③新品種や不耕起栽培など技術の向上,④GM大豆の普及,⑤中国への輸出増加,⑥バイオエネルギー需要などいくつか考えられるが,ブラジルの場合は1970年代に開始されたセラード開発に負うところが大きい。不毛の地とされてきたブラジル中央高原のサバンナ地帯開発は,日本の農業開発協力によってなされた。また,アルゼンチンでは他の国に先駆けてGM大豆を普及したことが生産拡大の要因として大きく,同国では最近10年間で非農業用地560万ヘクタールが大豆生産地に転換したといわれる。
南米3国で生産される大豆及び大豆油は大部分が輸出用で,その量は米国と合わせると世界の90%を超える。ブラジル及びアルゼンチンの大豆輸出先は,当初EU諸国が主体であったが,最近は中国が第1の輸出先になっていて,中国の輸入拡大が南米における大豆生産への意欲を高めたといっても過言ではない。
参照:土屋武彦2008「南米大豆の生産動向とGM大豆」グリーンテクノ情報4(2) 53-58
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