麒麟琳記〜敏腕Pの日々のつぶやき改題

還暦手前の身の回りのこまごま。
スポーツや映画演劇など。

凶家/役者論

2009年03月14日 | 鑑賞
 オーディションで選ばれた様々な出自の役者による『凶家』
 (作/イ・ヘジェ、訳/木村典子、演出/篠本賢一)
 「韓国現代戯曲ドラマリーディングvol.4」
 於:シアタートラム

 その役者一人ひとりの魅力が見事に融合した舞台でした。

【文中敬称略】

 物語は、南長者と、その家の下男・パブクスンの賭けから始まる。
 前者の中山一朗(フリー)が舞台中央の高い所に、いかにも長者という貫禄で鎮座している。
 後者は唯一フラットなエリアに立つ、この芝居で唯一の「人間」だ。
 演じるは松熊つる松(青年座)。
 名前からは解りにくいが、男役を演じる“女優”である。
 念のため

 このピッチャーとキャッチャー。。。
 座っているし、色々指示はするが思うようにいかないという点で長者が捕手で、舞台のド真ん中に立ち、一挙手一投足がドラマを動かすからパブクスンが投手か。

 この安定したバッテリーのバックの個性豊かな野手たち(昨日も書いたが上手と下手の雛壇に四人ずつ)。
 皆、元は南長者の家にいた人間だが、今は鬼神になっている・・・
 この鬼神達が、文字通り魑魅魍魎な動き(語り)を見せる。 

 例えば、福井裕子(演劇集団円)。
 元は南長者の妻で今は出産を司る鬼神・産神婆になっている。
 さすがベテラン。耳の遠い老婆ぶりは『ドカベン』の殿馬ばりの曲者ぶり。
 そして終盤。竈王夫人を蹴り殺すシーンは圧巻だ。
 竈王夫人は、元は彼女の息子ヒジュンの妾としてこの家に住んでいたファチュル(鈴木絢子/ピープルシアター)が鬼神になった姿。
 この女の腹が臨月を迎え、それが南長者の子と解った末の凶行。

 全編、このような業と欲に満ちた修羅場の連続するストーリー。

 こんな緊迫の連続に、ダイビングスーツに身を包んだ「福の神」が登場する。
 青色で同系色の足ひれを装備したひき蛙(岩崎正寛/演劇集団円)とビキニパンツも鮮やかに赤系統で覆われた「青大将」(川上直己/ピープルシアター)。

 とても「福の神」には見えない異形の二体は、南長者の両脇に現れる…。
 これは、とてつもない衝撃だ
 白を基調にした南長者の家ゆかりの者、黒いスーツの三人の語り手。モノトーンの世界に、突如の原色! しかも突拍子もないイデタチ。

 こういうメリハリが、リーディング『凶家』を面白くした要因の一つでもある。

 蛇ということで、最も高い舞台の下手にあぐらをかいて、首を左右に動かしている「青大将」の・・・恐らく見ている人はほとんどいないと思われる・・・健気な動きは、個人的に大好き

 個人的ついでに。。。
 パブクスンと南長者の間に位置する3人の語り手(内山厳/フリー、加藤慶太/東京演劇アンサンブル、ミョンジュ/ウィーズカンパニー)の中央の加藤。
 所属劇団では絶対見られないナチュラルな演技に驚いた(笑)

 全員素敵だったので、文中で紹介しきれなった出演者も列記。
 秦由香里(演劇集団円)
 清和竜一(朋友)
 手塚祐介(演劇集団円)
 中山昇(フリー)
 伏見嘉将(朋友)
 横尾香代子(演劇集団円)
 皆様、おつかれさまでした
コメント
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