読書日記

いろいろな本のレビュー

サムライとヤクザ -「男」の来た道  

2008-02-17 21:08:54 | Weblog


サムライとヤクザ―「男」の来た道 氏家 幹人 ちくま新書  
江戸時代の初期は戦国時代の遺風で、武士は刀を取って真剣勝負という場面も多々あったらしい。どんな卑怯な手を使っても勝つことが大事で、これが武士道というものだった。新渡戸稲造の書いた「武士道」は武士の美意識を説いて有名になったが、現実とは違ったようだ。江戸も中期になると天下泰平の影響で、武士は実際刀を取ることはなくなり、旗本連中もすっかりサラリーマン化した。司馬遼太郎は「剣は哲学になった」と言っている。筆者は広汎な資料を使ってこのサムライの精神が町奴やヤクザものに継承されていったと説いている。サムライによる「無礼討ち」が日常的に行われていたと思われがちだが、それほどことは簡単ではなかったらしい。下手にやると逆にお上に訴えられて、切腹させられたこともあったようだ。旗本奴の水野十郎左衛門と侠客の幡随院長兵衛の争いを読んでみると、町人の粗暴さはサムライを越えており、刀を捨てたサムライに成り代わって暴れまわっていることがよくわかる。氏家氏の著作は類書の中では野口武彦のものと並んで面白い。次が楽しみだ。

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