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判例紹介
借地上の建物を取壊してアスファルト舗装をし有料駐車場にしたが、契約解除が認められなかった事例 (東京高裁平成2年4月26日判決、判例時報1351号)
(事案)
借地人は、木造建物所有の目的で借地していたところ、昭和61年に借地上の建物を取壊してアスファルト敷きにして、「月極駐車場」の看板を出し、9台分の駐車場として使用していた。
地主は、借地を他人に使わせるので無断転貸であり、また建物所有のために貸したのに駐車場に使用するのは借地の使用目的に違反している、 と主張して契約の解除をした。
第一審裁判所の千葉地方裁判所木更津支部は、地主の主張を認めたが、本判決である第二審の東京高等裁判所は、借地人勝訴の逆転判決をした。
(判決の要旨)
借地人が本件土地を有料駐車場として使用していることは、本件土地の無断転貸にあたるし、本件賃貸借契約で定められた用法にも違反する。
しかし、次の理由から、本件賃貸借関係は、未だ解除を相当とするほど信頼関係が破壊されたものとはいえないので、解除は許されない。
借地人は、本件土地上の建物を以前貸家として使用していたが、1年以上借手がつかず、空家のままであった。庭には雑草がはびこり、浮浪者が入り込んだりして火災の発生する危険もあったので、建物がかなり老朽化していることも考慮して、とりあえず本件土地を駐車場として使用する目的で建物を取壊して整地及び舗装をしたことが認められる。
舗装はアスファルトによる簡易なもので、建物敷地への復元は容易であり、駐車場といっても他に何等の設備ないし施設はなく、駐車料金は月額5000円程度であるから、借地人の利益は本件土地賃料と大差がないこと、借地人は、昭和63年中に「月極駐車場」の看板を撤去したことが認められる。
借地人が借地上の建物を取壊したのはそれなりの合理的な理由に基づいており、有料駐車場としての利用は、利用者の利用関係の解消は困難ではなく、暫定的かつ小規模なものであって、その原状への復元も容易である。
(短評)
借地を駐車場にして他人に貸すケースがある。地主がこれを承知していても、契約更新のときなどに駐車場使用を理由に解除を迫ってくることも珍しくない。
判断の微妙な違いにより、本判決と一審の地方裁判所の結論が分かれている。
(1990.09.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
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