判例紹介
建物賃貸借契約に基づく使用収益の開始前に借地借家法32条1項により賃料増減額請求をすることの可否 (最高裁判所第3小法廷平成15年10月21日判決。判例時報1844号50頁)
(事案の概要)
X(借主)とY(貸主)は、平成3年7月9日、Yが建築する予定の建物の一部につき、賃貸借期間20年、敷金234億円、平成7年3月1日予定の引渡し時点における賃料年額18億円、以後2年を経過するごとに賃料を8%値上げする旨の賃料自動増額特約などを定めたサブリース契約を締結した。Yは、平成7年2月28日、完成した本件建物をXに引き渡したが、Xはその引渡し前である同月6日に賃料減額請求をした.その後、Xは、Yに対し、借地借家法32条1項に基づく賃料減額の訴えを提起したが、Yは、本件サブリース契約は事業契約であり賃貸借契約ではないから同法32条1項の適用はない旨主張してXの賃料減額請求を争った。
1審判決(判例時報1660号65頁)は、本件サブリース契約の趣旨・目的等に照らし、本件サブリース契約には同法32条1項は適用されないとしてXの請求を棄却した。
原審(判例時報1697号59頁)は、本件建物の使用関係の法的性質は賃貸借契約であり、本件サブリース契約には同法32条1項は適用され、Xは賃料減額請求ができるとしたうえで、「借地借家法32条1項は事情変更の原則に基づき賃料を増減額できることにしたものであるから、契約の成立から賃料支払までの間に相当の期間が経過したことで事情の変更があれば、第1回賃料支払前に賃料減額請求がされても同項にもとづく増減額請求として有効である」旨判示して、賃料は年16億0769万6000円に減額されたと判断した。
(判決)
本判決は、本件サブリース契約は、YがXに対して本件建物を使用収益させXがYに対してその対価として賃料を支払うというものだから賃貸借契約であり、借地借家法が適用され、賃料自動改定特約によっても同法32条の適用は排除されないとしたうえで、「借地借家法32条1項の規定に基づく賃料減額請求権は、賃貸借契約に基づく建物の使用収益が開始された後において、賃料の額が同項所定の経済事情の変動等より、又は近傍同種の建物の賃料の額に比較して不相当となったときに、将来に向かって賃料額の増減をもとめるものと解されるから、賃貸借契約の当事者は、契約に基づく使用収益の開始前に、上記規定に基づいて当初賃料の額の増減を求めることはできない」としてXの請求を退けた。
(寸評)
本判決は、サブリース契約が建物賃貸借契約で借地借家法の適用があり、賃料自動改定特約があっても同法32条1項の賃料減額請求ができること、賃貸借契約に基づく建物の使用収益の開始前には当初賃料の増減額請求はできないことを認めた最高裁判決であり、賃料減額請求に関し参考になる判決である。
(2004.05.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
東京・台東借地借家人組合
無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
(土曜日・日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。