東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【判例紹介】 賃料増額請求事件で、鑑定結果より低額の賃料を認定した事例

2011年03月03日 | 家賃の減額(増額)

判例紹介

 賃料増額請求につき、当該請求についての調停事件における鑑定書を採用せず、消費者物価スライド法を採用して鑑定結果よりも低額の賃料を認定した事例 (大阪高裁59年8月17日判決、判例タイムズ

 (事案)
 昭和45年5月に7万円で借りる。その後昭和49年1月に9万5000円に、同52年4月に12万5000円にいずれも調停により、増額された。家主は、昭和55年4月、3度目の値上げ請求の調停を起こしたが、賃借人は今度は調停を認めず、民事裁判となった。家主は、調停の中で作った鑑定書(中崎鑑定という)に基づき、16万5000円の家賃を請求し、1審の京都地裁で家主の勝訴となった。中崎鑑定は、差額配分方式の18万5000円、スライド方式の15万円の平均である16万5000円を適正賃料としていた。賃借人が控訴して本判決となった。

 (判決の要旨)
 「中崎鑑定は、差額配分方式により賃料を算定するにつき、建物敷地の更地価格を1平米あたり209万7000円と定めたが、昭和52年4月の値上げ調停での鑑定書(高力鑑定という)によれば、更地価格は1平米あたり106万7000円としている。中崎、高力両鑑定の基準時点に約3年の違いがあるとはいえ、全国市街地価格推移表によれば、昭和52年が1727、昭和55年が2059であり、本件建物敷地価格が、右3年のうち2倍近くまで上昇したことまで認められないので、両鑑定のいずれが適正か判断できない。また、本件建物は、地下1階地上2階建で、賃借人は地下と1階の1部を借りているだけなのに、中崎鑑定は、敷地の賃借料相当分を階層別の効用価値比率にしたがって各階に按分していないこともあるので、中崎鑑定を採用できない。他に本件建物の適正賃料額を算定する資料がないので、スライド方式により算定するのが相当であり、総理府統計局の消費者物価指数(京都市、家賃)によれば、15万4700円となる。」

 (短評)
 過去2回の値上げとも調停でなされたのが本件の特徴である。家主は3度目も成功すると思って調停、裁判と進めたが、以前の調停で使った鑑定書に足を引っ張られた。賃料値上裁判では、裁判所は鑑定書によって裁判するが遺憾ながら実情であるが、家主の値上げ請求の強引さが裁判所独自の判断を生んだと思われる。

(1986.03.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

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