東京・台東借地借家人組合1

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【判例】*共同相続不動産から生ずる賃料債権の帰属と後の遺産分割の効力

2016年08月04日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

最高裁判例

相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するとされた事例
(最判平成17年9月8日 民集59巻7号1931頁)


       主   文
 原判決を破棄する。
 本件を大阪高等裁判所に差し戻す。


       理   由
 上告代理人田中英一、同永井一弘の上告受理申立て理由について

1 原審の確定した事実関係の概要は、次のとおりである。

(1)甲は、平成8年10月13日、死亡した。その法定相続人は、妻である被上告人のほか、子である上告人、乙、丙及び丁(以下、この4名を「上告人ら」という。)である。

(2)甲の遺産には、第1審判決別紙遺産目録1(1)~(17)記載の不動産(以下「本件各不動産」という。)がある。

(3) 被上告人及び上告人らは、本件各不動産から生ずる賃料、管理費等について、遺産分割により本件各不動産の帰属が確定した時点で清算することとし、それまでの期間に支払われる賃料等を管理するための銀行口座(以下「本件口座」という。)を開設し、本件各不動産の賃借人らに賃料を本件口座に振り込ませ、また、 その管理費等を本件口座から支出してきた。

(4)大阪高等裁判所は、平成12年2月 2日、同裁判所平成11年(ラ)第687号遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告事件において、本件各不動産につき遺産分割をする旨の決定(以 下「本件遺産分割決定」という。)をし、本件遺産分割決定は、翌3日、確定した。

(5) 本件口座の残金の清算方法について、被上告人と上告人らとの間に紛争が生じ、被上告人は、本件各不動産から生じた賃料債権は、相続開始の時にさかのぼっ て、本件遺産分割決定により本件各不動産を取得した各相続人にそれぞれ帰属するものとして分配額を算定すべきであると主張し、上告人らは、本件各不動産か ら生じた賃料債権は、本件遺産分割決定確定の日までは法定相続分に従って各相続人に帰属し、本件遺産分割決定確定の日の翌日から本件各不動産を取得した各相続人に帰属するものとして分配額を算定すべきであると主張した。

(6)被上告人と上告人らは、本件口座の残金につき、各自が取得することに争いのない金額の範囲で分配し、争いのある金員を上告人が保管し(以下、この金員を「本件保管金」という。)、の帰属を訴訟で確定することを合意した。

2  本件は、被上告人が、上告人に対し、被上告人主張の計算方法によれば、本件保管金は被上告人の取得すべきものであると主張して、上記合意に基づき、本件保管金及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成13年6月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。

3 原審は、上記事実関係の下で、次のとおり判断し、被上告人の請求を認容すべきものとした。

4 しかし、原審の上記判断は是認できない。その理由は、次のとおりである。
  遺産は、相続人が数人あるときは、相続開始から遺産分割までの間、共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。

 従って、相続開始から本件遺産分割決定が確定するまでの間に本件各不動産から生じた賃料債権は、被上告人及び上告人らがその相続分に応じて分割単独債権として取得したものであり、本件口座の残金は、これを前提として清算されるべきである。

  そうすると、上記と異なる見解に立って本件口座の残金の分配額を算定し、被上告人が本件保管金を取得すべきであると判断して、被上告人の請求を認容すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、本件については、更に審理を尽くさせる必要があるから、本件を原審に差し戻す。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


    最高裁裁判長裁判官才口千晴、裁判官横尾和子、裁判官甲斐中辰夫、裁判官泉徳治、裁判官島田仁郎

 

 

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