東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【判例】*土地賃借人が該地上の借地上建物に設定された抵当権は敷地の借地権に及ぶとされた事例

2018年12月03日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

最高裁判例

1、土地賃借人が該地上の借地上建物に設定された抵当権は敷地の借地権に及ぶとされた事例
2、地上建物に抵当権を設定した土地賃借人は抵当建物の競落人に対し地主に代位して当該土地の明渡を請求ができないとされた事例
(最高裁昭和40年5月4日判決 民集19巻4号811頁)


       主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。


       理   由
 上告代理人長谷川毅の上告理由第1・2点について。

 土地賃借人の所有する地上建物に設定された抵当権の実行により、競落人が該建物の所有権を取得した場合には、民法612条の適用上賃貸人たる土地所有者に対する対抗の問題はしばらくおき、従前の建物所有者との間においては、右建物が取毀しを前提とする価格で競落された等特段の事情がないかぎり、右建物の所有に必要な敷地の賃借権も競落人に移転するものと解するのが相当である(原審は、択一的に、転貸関係の発生をも推定しており、この見解は当審の執らないところであるが、この点の帰結のいかんは、判決の結論に影響を及ぼすものではない。)。何故なら、建物を所有するために必要な敷地の賃借権は、右建物所有権に付随し、これと一体となって1の財産的価値を形成しているものであるから、建物に抵当権が設定されたときは敷地の賃借権も原則としてその効力の及ぶ目的物に包含されるものと解すべきであるからである。従って、賃貸人たる土地所有者が右賃借権の移転を承諾しないとしても、すでに賃借権を競落人に移転した従前の建物所有者は、土地所有者に代位して競落人に対する敷地の明渡しを請求することができないものといわなければならない。結論においてこれと同趣旨により、本件における従前の建物所有者たる上告人から競落人たる被上告人に対して本件土地明渡しを請求しえないとした原審の判断は、正当として是認すべきである。


 されば、本件において、かかる特段の事情を主張立証すべき責任は、従前の建物所有者たる上告人に存するものというべく、これと反対の見解に立つ所論は理由がないし、また、被上告人が上告人から競落により賃借権を取得したとしてもそれは地主の承諾を条件とするものであるとの所論は、前記原判示の趣旨を正解しないものである。さらに、上告人が本件競落によって被上告人の取得した賃借権とは別個の賃借権を取得したとの所論主張を肯認すべきなんらの根拠も見出しがたい。論旨は、畢竟、独自の法律的見解に立脚して原判示を非難するものであり、いずれも採用するを得ない。よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。


   最高裁裁判長裁判官横田正俊、裁判官石坂修一、同五鬼上堅磐、同柏原語六、同田中二郎

 


(註)競売により建物所有権が買受人に移転した時は、敷地利用権も買受人に移転する(同趣旨 最高裁昭和48年2月8日判決金融・商事判例677号44頁)。買受人が土地所有者に対抗できるかは別問題である。敷地使用権が賃借権の場合は、土地所有者の承諾がなければ、対抗できない(民法612条1項)。しかし、昭和41年の借地法の改正(9条ノ3)により借地上建物競売又は公売により買受けた者は借地権の譲受けについて賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可を得ることが出来る規定を設けた。この規定は借地借家法20条に踏襲されている。

 

 

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