東京・台東借地借家人組合1

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【判例】*借地契約における増改築禁止の特約に違反したにも拘らず解除が許されないとされた事例

2016年08月02日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

最高裁判例

借地契約における増改築禁止の特約に違反したにも拘らず解除が許されないとされた事例
最高裁 昭和41年4月21日判決 民集21巻4号720頁)

 

           主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。

 

           理   由
上告代理人松井邦夫の上告理由1、2について。

 一般に、建物所有を目的とする土地の賃貸借契約中に、賃借人が賃貸人の承諾をえないで賃借地内の建物を増改築するときは、賃貸人は催告を要しないで、賃貸借契約を解除することができる旨の特約(以下で単に建物増改築禁止の特約という。)があるにかかわらず、賃借人が賃貸人の承諾を得ないで増改築をした場合においても、この増改築が借地人の土地の通常の利用上相当であり、土地賃貸人に著しい影響を及ぼさないため、賃貸人に対する信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りないときは、賃貸人が前記特約に基づき解除権を行使することは、信義誠実の原則上、許されない。

 以上の見地に立って、本件を見るに、原判決の認定するところによれば、第1審原告(脱退)橋本ぢんは被上告人に対し建物所有の目的のため土地を賃貸し、両者間に建物増改築禁止の特約が存在し、被上告人が該地上に建設所有する本件建物(2階建住宅)は昭和7年の建築にかかり、従来被上告人の家族のみの居住の用に供していたところ、今回被上告人はその一部の根太および2本の柱を取りかえて本件建物の2階部分(6坪)を拡張して総2階造り(14坪)にし、2階居宅をいずれも壁で仕切った独立室とし、各室ごとに入口および押入を設置し、電気計量器を取り付けたうえ、新たに2階に炊事場、便所を設け、かつ、2階より 直接外部への出入口としての階段を附設し、結局2階の居室全部をアパートとして他人に賃貸するように改造したが、住宅用普通建物であることは前後同一であり、建物の同一性をそこなわないというのであって、右事実は挙示の証拠に照らし、肯認できる。

 そして、右の事実関係のもとでは、借地人たる被上告人のした本件建物の増改築は、その土地の通常の利用上相当というべきであり、いまだもって賃貸人たる第1審原告(脱退)橋本ぢんの地位に著しい影響を及ぼさないため、賃貸借における信頼関係を破壊するおそれがあると認めるに足りない事由が主張立証されたものというべく、従って、前記無断増改築禁止の特約違反を理由とする第1審原告(脱退)橋本ぢんの解除権の行使はその効力がないものというべきである。

 しからば、賃貸人たる第1審原告(脱退)橋本ぢんが前記特約に基づいてした解除権の行使の効果を認めなかった原審の判断は、結局正当であり、論旨は、畢竟失当として排斥を免れない。

 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官の一致で、主文のとおり判決する。


   最高裁判所裁判官松田二郎、裁判官入江俊郎、裁判官長部謹吾、裁判官 岩田誠

 

 

東京・台東借地借家人組合

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