(問) 先月8年間住んでいた賃貸マンションを引越しました。敷金として家賃の2か月分の30万円を預けてありましたが、先頃管理している不動産業者の見積りによると、壁のクロスの張替え、クリーニング代等で合計50万円かかったので、残りは家主が負担するので敷金は返せないとの連絡がありました。
8年間住んでいましたが自分の家のように大事にしていましたし、引越の時は綺麗に掃除をしてでたのに敷金が戻らないことに納得がいきません。何とか取戻す方法はないでしょうか。
(答) 敷金は、賃貸借に関して賃借人が賃貸人に対して負担する債務を担保するために預けてあるお金で賃貸借契約が終了して借家人が引越して行くときには家主は預かっている敷金は当然全額返還しなければなりません。
ただし、借家人が家賃を滞納していたり、わざと建物や設備を破損したときは借家人は損害を賠償しなければならず、その分の費用は敷金から差し引かれる場合があります。
ところで、借家人が建物を破損したのではないが、居住していれば自と汚れたり、設備・建具等の寿命が来る自然磨耗した時に借りた最初の状態に戻さなければならない義務があるかどうか。最近の契約書では「故意と過失と問わず退去時の修理は全て借主が負担する」旨の不等な特約がつけられているものもあり、こうした特約を根拠に、莫大な修理費を請求される事例が後を立ちません。
国土交通省は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(*)を発表し、「通常に生活してできる汚れや損傷」は賃貸人の負担であることを明記した上で、畳の日焼け、タバコのヤニ、テレビや冷蔵庫の後部の電気ヤケ、クロスの変色等々、具体的ケースを上げて、右の例の場合いずれも賃借人の「通常の住まい方で発生するもの」として、借家人に修繕義務なしと定めています。
従って、質問のケースでは敷金は全額返還請求できます。
返還にあたっては、内容証明郵便で敷金の返還を督促し、それでも返して寄こさない場合には簡易裁判所へ行って相談すれば、訴額が60万円までなら簡単な手続きで敷金返還請求の少額訴訟を起こすことができます。
東京借地借家人新聞より
(*)「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」の本文に更に多数の判例が追加されたものが「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン(改訂版)」(大成出版社)である。敷金返還トラブルの指針になるものであり、参考になる本である。
東京・台東借地借家人組合
無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
(土曜日・日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。