東京・台東借地借家人組合1

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“地上げ”社長ら逮捕 大阪の不動産会社 上場企業が依頼 非弁容疑で警視庁

2008年03月05日 | 住宅・不動産ニュース

 中堅総合建設会社「スルガコーポレーション」(本社・横浜市)所有の大型商業ビルをめぐり、弁護士でないのに報酬を得て入居者と立ち退き交渉をした疑いが強まったとして、警視庁は3日、弁護士法違反(非弁行為)の疑いで大阪市東住吉区の不動産会社「光誉実業」の社長、朝治博容疑者(59)、会社役員趙浩一容疑者(43)ら2人を新たに逮捕。これで逮捕者は計12人になった。うち11人は光誉実業関係者。

 朝治容疑者らはスルガ社から約42億円を受け取っていたが、このうち10億円前後が報酬だったとみられる。朝治容疑者は指定暴力団山口組宅見組幹部と親しい関係とされ、組織犯罪対策4課の調べでは、一部が山口組側に流れた可能性が高いとみて解明を進めている。

 事件の舞台は、東京都千代田区麹町5丁目にあった「秀和紀尾井町TBRビル」(13階建て)。参院議員宿舎の隣の一等地で、登記簿によると、スルガ社は05年9月末、ビルと土地を外資系信託銀行から取得。07年9月までに入居者を退去させ、ビルを解体。土地の所有権はその後、別の信託銀行に移っている。ビルには、外国大使館や法律事務所など数十のテナントが入っていたという。

 組織犯罪対策4課の調べでは、社長らは、同物件をスルガ社が取得した後の05年秋以降、弁護士ではないのに、報酬を得てビル入居者らと立ち退き交渉をした疑いが持たれている。

 組織犯罪対策4課の調べなどによると、スルガ社が光誉に立ち退き交渉を依頼した不動産は、逮捕容疑の対象となった東京都千代田区の「秀和紀尾井町TBRビル」のほか、渋谷区内3カ所と港区1カ所の計4カ所の商業ビル。光誉は03~07年、スルガ社から報酬を得て、ビルの入居者らに「スルガ社からビルの所有権の譲渡を受けた」などとする虚偽の売買契約書の写しを示し、立ち退き交渉をしていたという。

 しかし、登記上、所有権は移っておらず、同課は、実際はスルガ社が所有したまま、立ち退きを効率的に進めるため、交渉を外部に依頼したとみている。

  「スルガコーポレーション」は1972年に駿河建設として設立され、95年に東証2部上場を果たした。銀座や六本木など都心の一等地で、特に権利関係が複雑化した物件を整理・転売する事業で大きく業績を伸ばしたとされる。07年3月期決算の売上高は約792億円。元警察庁暴力団対策部長や元検察幹部が取締役に名を連ねている。

 「スルガコーポレーション」が取得した都心のビルを巡る弁護士法違反事件で、警視庁に逮捕された大阪市の不動産会社社長、 朝治  博容疑者(59)は、元暴力団組長の活動拠点として知られていた港区六本木のビルの再開発にも関与していたことがわかった。

 このビルは、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の不動産取引に絡んで詐欺罪に問われた元公安調査庁長官らも買収を計画していた。警視庁は、今回の事件の背景に、権利関係の複雑な不動産取引に暴力団が群がる構図があったとみて、六本木のビルの取引の経緯も調べている。

 問題のビルは、約3800平方メートルの敷地に建物6棟が並ぶ通称「TSKビル」。六本木ヒルズと東京ミッドタウンの二つの超高層ビルを結ぶほぼ中間地点に30年以上前に建設され、かつては元暴力団組長が実質上経営する企業が所有していた。現在は再開発のため解体工事が終盤に差し掛かっている。

 不動産業界がTSKビルに注目するようになったのは、このビルを活動拠点にしていた元暴力団組長が死去した2002年ごろから。増改築が繰り返された建物には未登記の部分が点在して所有権が複雑化し、再開発に伴う立ち退き料を見込んだ暴力団関係者らが居座るなどしたため、賃借権や抵当権なども次々に設定された。

 関係者によると、06年7月になって千代田区の不動産会社が、競売で建物の大部分を約252億円で落札した。さらに昨年3月ごろには、落札されていない2部屋(計約190平方メートル)について、元公安調査庁長官、緒方 重威 被告(73)(詐欺罪で公判中)らが転売を計画。朝鮮総連から詐取したとされる資金の一部を見せ金として2部屋の所有者側に示し、25億円の買い取り価格を提示したが、最終的に売買は成立しなかったという。

 警視庁の調べでは当時、このうち1部屋の所有権を、朝治容疑者の親族が社長を務める大阪市内の不動産関連会社が所有。その後、この部屋はビル全体を買収した不動産会社に転売され、同庁は、この取引で朝治容疑者が多額の利益を上げたとみている。

 暴力団による地上げの事情に詳しい都内の中堅不動産会社の幹部によると、権利関係が複雑な不動産には、立ち退き料を目当てにした暴力団関係者が居座り、立ち退きを交渉する他の暴力団関係者も、多額の報酬を得るというビジネスモデルが出来上がっているという。この幹部は「TSKビルは、所有権をまとめれば数百億円で確実に転売できる注目の物件。当時、地上げ屋や不動産ブローカーが入り乱れて利益をあさっていた」と指摘している。

◇非弁護士(非弁)活動

 弁護士法72条に、弁護士でない者が報酬を得る目的で業として法律事務などを取り扱うことを禁じている。

 不動産の入居者(借主)との立ち退き交渉は、期間が残っている賃貸借契約を破棄させるため、法律事務にあたる。違反すると罰則(2年以下の懲役または300万円以下の罰金)がある。

 しかし、報酬を払って法律事務を扱うよう依頼した側を罰する規定はない。

 

 

 追伸、スルガ社は、今回の事件が原因で金融機関から融資を止められ、2008年6月下旬に倒産した。

 

全国借地借家人新聞より

 

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