判例紹介
建物を転貸目的、賃料自動増額特約で一括賃貸するサブリース契約につき借地法32条の適用が肯定され、賃料自動増額特約があっても、賃料が不相当になれば、賃借人が賃料減額請求できるとされた事例 (東京地裁平成8年10月26日判決、判例時報87頁以下)
(事実)
建物の賃借人Aが賃貸人Bに対して、賃料減額請求を請求すると共に、その賃料の確認と差額賃料の返還を求め、更に減額賃料と現行相場に基づいて算定される預託金と支払済みの預託金との差額の返還を求めた事案である。
本件の契約は、賃借人である不動産会社A(原告)が、賃借建物を一括して第三者に転貸することを目的としたサブリース契約である。
本件では、建物所有者・賃貸人B(被告)は、本件契約はいわゆるサブリース契約であり、土地所有者が所有地に賃貸用オフィスビルを建築して、賃借人A(原告)がこのビルを一括賃借して、Aはテナントの入居の有無に関係なく、Aがビルを竣工時から10年間の賃貸期間が満了するまで賃料の支払を保証するものであるから、借地借家法32条の適用を必然的に排除することが予定されているとして、Aの主張を全面的に争った。
これに対し、Aはサブリース契約に対しても借地借家法32条の適用を否定する理由はないと主張していた。
Aの請求は一部容認。預託金の返還については敗訴。
(判決)
「本件賃貸借契約は被告から本件建物を賃借した原告が、第三者に転貸することを目的としたいわゆるサブリース契約であり、原告は10年間一括賃借すること、賃料を支払い開始時期から3年毎に6%増額することが約されている。但し、大幅な経済変動があった場合は協議の上増加率を決定することになっている。右増額特約の趣旨に照らすと、減額を想定しているとは考えられず、その意味で最低賃料を保証した結果となっているといえる。
しかし、右特約は、賃料を対価として建物の使用収益をさせることを目的としており、その本質は賃貸借といわざるを得ず、借地借家法32条の適用がないとする理由はない。
従って、賃料の増額の特約の存在にかかわらず、賃料が不相当になれば減額を請求することができると解すべきである。本件が10年間一括賃借や賃料増額の特約を含むサブリース契約であることについては、適正賃料の算定に当って考慮されるに過ぎないと考える」
「確かに、預託保証金は通常賃料を重要な要素として定められることが多い。しかし借地借家法32条による賃料の増額や減額が認められたからといって当然に預託金保証金を増額したり、減額すべきであるとは考えられない」。
(寸評)
判旨は概ね妥当と思われる。バブル経済崩壊後、本件と同旨の裁判が目立っている。下級審の通例は、サブリース契約にも借地借家法の適用を認めるものが多い。
また、預託金の返還については初めての判決と思われ、参考になろう。
(1997.06.)
(東借連常任弁護団)
東京借地借家人新聞より
東京・台東借地借家人組合
無料電話相談は 050-3656-8224 (IP電話)
受付は月曜日~金曜日 (午前10時~午後4時)
(土曜日・日曜日・祝祭日は休止 )
尚、無料電話相談は原則1回のみとさせて頂きます。