東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 建物の滅失(火災・天災・地震)と借家権 

2011年03月17日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

【問】 火災の類焼によって借家が焼失してしまいましたが、借家権はなくなってしまうのでしょうか。災害の場合も同じですか。


【答】 建物が火災で焼失したり、地震で倒壊したりした場合を総称して「滅失」といいます。そして、建物が滅失すると、賃貸借契約の目的物がなくなったので、契約そのものも消滅するというのが一般的な解釈です。従って、一般的にはご質問の場合借家権はなくなるといわなければなりません。災害の場合も同様です。

 ただ、例外として「罹災都市借地借家臨時処理法」という法律があります。この法律は、もともと第2次世界大戦による戦災を対象としたものでしたが、その後、大規模な火災、地震、風水害その他の災害があった場合に、政令によって地区を定めて準用できることになっています。

 もし、災害があって、しかも政令によって法律が準用される地区とされますと、災害によって建物が滅失した時の借家人には、いろいろな優先権が与えられます。それを次に列挙します。

 (1)罹災建物の敷地又はその換地について、土地所有者や借地権者(借地人)がまだ建物を建てて使用していない場合には、政令施行の日から2年以内に、土地所有者に対して建物所有目的の借地を申出ることによって、他の者に優先して、相当な借地条件で借地権を取得できます。

 この場合、土地所有者が右の申出を受けた日から3週間以内に拒絶の意思表示をしなければ、その3週間経った時に申出を承諾するものとみなされますし、その拒絶には、正当事由がなければなりません(2条)。

 (2)罹災建物の敷地又はその換地に借地権者がいても、同じくまだ建物所有目的で使用されていない場合には、政令施行後2年以内に、その借地権の譲渡の申出をすることによって、他の者に優先して、相当な対価でその借地権の譲渡を受けることができます。

 この場合、譲渡の申出を受けた借地権者の取扱いは、(1)の土地所有者の場合と同様です。そして右の場合の借地権譲渡は、賃貸人が承諾しなくても、承諾したものとみなされます(3条、4条)。

 右の2つの場合に、借家人の取得した借地権は期間を定めない場合は10年、期間を定める場合は10年以上の契約をしなければなりません(5条)。

 (3)罹災建物の敷地又はその換地に、第三者が最初に建物を築造した場合、滅失当時の借家人はその完成前に借家の申出をすることによって、他の者に優先して、相当な借家条件で借家権を取得できます(14条)。

 以上が主なものです。右の借地または借家の条件について、当事者間の協議が整わないときは裁判所に申立をすれば、裁判所が「従前の賃貸借の条件、土地又は建物の状況その他一切の事情を斟酌して」(15条)定めてくれることになっています。

 また、1つの罹災建物について、数人の借家人がいて、みんなが右の申立をした場合で、その割合について当事者の協議が整わないときも、同じく裁判所が割当をすることができることになっています(16条)。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より


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「地震に伴う法律問題Q&A」(近畿弁護士会連合会編)<PDF版> (絶版のため(株)商事法務HPで公開)

Q&A災害時の法律実務ハンドブック改訂版(平成23年6月発行)(関東弁護士会連合会編集) (新日本法規出版株式会社)

罹災都市借地借家臨時処理法の改正に関する意見書
日本弁護士連合会  2010年10月20日

 

東京・台東借地借家人組合

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