東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 「更新料支払特約」

2011年03月16日 | 更新料(借家)

【問】 契約書に「更新する場合は更新料を新家賃の1か月分支払うこと」と書いてあります。この場合、更新料を支払わなければ更新できないでしょうか。


【答】 更新料というのは、契約期間の定めがある建物賃貸借において、契約期間が満了し更新するときに、借家人から家主に支払われる金銭です。

 建物賃貸借契約は、契約期間が満了しても、当然には終了するものではなく、家主に、賃貸借契約を終了させるべき正当の事由がなければ、前の契約と同一の条件で更新されたものとみなされています。つまり、家主が建物の明渡を求めるには、正当の事由が必要であり、これがない限り、契約期間満了後も、借家人は建物を今までと同様賃借していくことができるのです。

 結局契約の更新に際して、更新料というのは、法律上何らの定めもなく、更新料を請求する根拠はありません。

 ところが、実際には、借家契約の更新に際して、更新料の支払いが行われているのは、一部の悪質な家主が、借家人の弱い立場に付け込んで取り立てて来たからにほかなりません。

 更新料の性格については、賃料の前払い的なものとみる考え方や、賃料の後払いとみる考え方あるいは更新を円滑にするための安心料とみる考え方がありますが、いずれにしても納得できる理由づけとなっていません。

 ところで、最近、契約書において、あらかじめ、更新時には更新料を支払う旨の特約を付けた場合が増えてきています。このような更新料支払い約束のある場合、更新料を支払わなければ更新できないかが問題となります。

 この支払い約束の効力については、本来、契約更新に当り、家主に何らの正当の事由がないのに、更新料支払いという経済的な負担を強制することになるので、借家法6条(借地借家法30条)により借家人に不利な特約として無効というべきです。あるいは、法定更新の場合には、借家人は、何らの経済的負担なくして更新の効果を受けることができるとする借家法の趣旨からして、その支払い約束は、法定更新の場合には適用がないというべきです(最高裁昭和57年4月15日判決)。

 しかしながら、判決の中には、支払い約束した更新料の額が、家賃の1~2か月分程度であれば支払約束を有効とするものがあり、不払の場合、「更新料は賃料都は法律的には別個であるから」賃貸借契約の解除原因とならないとする判決(東京地裁昭和45年2月13日判決)と「更新料の支払い義務は賃借人としての重要な債務であるから」賃貸借契約の解除原因となるとする判決(東京地裁昭和57年10月20日判決)とがあります。

 後者の場合でも更新料不払いがあっても家主との間の信頼関係を破壊したと認められない限り契約解除は認められませんので、期間満了時には、家主との間で、故意に協議を回避するようなことをせずに誠実に協議をする必要があります。

 

東借連常任弁護団解説

あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 


関連判例
①「法定更新の場合、賃借人は、何らの金銭的負担なくして更新の効果を享受することができるとするのが借家法の趣旨であると解すべきものであるから、たとえ建物の賃貸借契約に更新料支払の約定があっても、その約定は、法定更新の場合には、適用の余地がない」(東京高裁昭和56年7月15日判決 東高民時報32・7民166)

②「本件建物賃貸借契約における更新料支払の約定は、特段の事情の認められない以上、専ら右賃貸借契約が合意更新される場合に関するものであって法定更新された場合における支払の趣旨までも含むものではない」(最高裁昭和57年4月15日判決 昭和56年(オ)第1118号)

 

東京・台東借地借家人組合

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