東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【判例紹介】 借地上の建物の朽廃が近いとして借地権の譲渡を許可をしなかった事例 

2008年01月07日 | 譲渡・転貸借

 判例紹介

 借地上の建物の朽廃が近いことを理由として賃借権の譲渡許可の申立を排斥した事例 (東京高裁平成5年11月5日決定、判例タイムズ842号)


 (事案)
 賃借人は、借地上の建物を買取って借地権を取得したが、賃借期間は平成4年9月で20年であった。本件建物は平成2年から半ば空き家状態で、通常の維持管理もされずに放置されていた。

 賃借人は、平成3年、本件賃借権を第三者に譲渡する許可の申立を横浜地方裁判所川崎支部に申立てたところ、地主は本件建物は朽廃しており賃借権は消滅しているのだから譲渡の許可は認められないよ争ってきた。

 横浜地方裁判所川崎支部は、「本件建物は、老朽化しているものの、朽廃に至ったとは認められない」として、賃借権の譲渡の許可をした。

 これに対して、地主が東京高等裁判所に不服を申立てたところ、高裁は地裁の決定を取消して譲渡許可の申立を棄却した。


 (決定要旨)
 「本件建物は、日本瓦で葺かれた屋根の 大棟の中央が沈下し、全体にゆがみがあり、一部の瓦は欠損したり、はがれたりしている。屋根全体に瓦のずれがあり、瓦を支える葺土、野地板、ルーフィングの老朽化、朽廃化が激しい。

 このため、建物全体が雨漏りし、各部屋の天井、内壁のベニヤ板のはがれ、腐朽、畳の腐り、壁のひび、はがれなど、腐朽破損が進行している。6畳間の場合には天井に穴があき、空が見える状態である。基礎は浅いところが多く、土台の一部は、完全に腐食し残りも腐食が入り始めている。柱床には傾斜が見られる。

 右認定したところによれば、本件建物はすでに朽廃に近い状態にあって、今後短期間のうちに朽廃の状態に到達し、本件土地の賃借権もこれに伴い消滅する可能性が高い。

 借地権が今後短期間のうちに消滅する可能性が高い場合は、借地人が建物の修繕その他の改築をしようとしても、賃貸人がこれを承諾しない可能性が高く、その場合に裁判所がその承諾に代わる許可の裁判をすることが適当でない場合が多いから、このような建物及び借地権を譲り受けても、譲受人は結局その建物を利用することができず、買受けの目的を達成することができない可能性が大きい。このように売買の目的を達成することが困難な事情があるにもかかわらず、借地権の譲渡の許可をするのは、借地をめぐる紛争の予防を目的として制定された借地権譲渡許可の制度の趣旨に合致しない。したがって、本件譲渡許可は認められない。


 (説明)
 借地期間の残存期間が少ない場合、譲渡許可を裁判所が出さないことがあるが、本件では建物が朽廃に近いことを理由に譲渡許可を否定した。建物を空家にしていたことが老朽化を進めたろうし、賃借人に不利に作用したものと思われる。

(1994.08.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

東京・台東借地借家人組合

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