東京・台東借地借家人組合1

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【判例紹介】 期間中途解約の場合に保証金は明渡後相当期間が経過すれば返還すべきとした事例 

2008年01月08日 | 敷金・保証金・原状回復に関する判例等

 判例紹介

 借家人の都合による期間中途解約の場合には保証金は新借家人の保証金差入時まで返還しない特約があっても明渡後相当期間が経過すれば返還すべきとした事例 (東京地裁昭和60年4月25日判決、判例時報1176号)


 (事案)
 期間5年の中途において借家人の都合によって解約の申入れがされるとその6ヶ月後に契約が終了し、保証金は明渡後新借家人が決り家主がその新借家人から保証金を受領したときとする旨の特約があった。

 明渡後1年以上たったが家主はまだ新借家人が決まらないといって、右特約を盾に返還を拒否。

 そこで借家人が右の特約は借家人の地位を不安にする不合理なもの(新借家人に貸すかどうか、いつ貸すのかなどは家主の胸三寸)であるから無効である。有効だとしても明渡後相当期間経過後は右特約の効力は及ばないとして約1年後に返還請求をした。


 (判旨)
 「新入居者が決まらない限りいつまでも保証金の返還を要しないとするならば返還義務の成否は結局賃貸人の行為いかんにかかることとなり、賃借人の利益が害される。さりとて賃貸人が入居者を探す真面目な努力をしているか否かによって区別するのは法律関係を不明確にするものであって相当でなく、新入居者が容易に得られない場合に、それによる不利益を賃借人に帰するのは公平でない」

 「従って本件のような特約のもとでも、明渡後賃貸人が新入居者を探すのに通常必要と考えられる時日を考慮して相当な期間を経過した時は、新入居者が現実に決定したか否かにかかわりなく保証金返還債務の履行期が到来するものと解すべきであり、そう解することによってのみ右の特約の効力を是認しうるものというべきである。本件では明渡後1年以上経過後の返還請求であるから右の相当の期間は経過したものというべく賃貸人は保証金を返還しなければならない


 (短評)
 当然の結論である。問題は右の「相当期間」とは具体的にどの位なのかである。契約全体の内容によって異なってくるので判例の集積を待つしかない。特約があるからといってそれに100%拘束されるわけではない好例。なお本件は家主が控訴したが棄却された。

(1985.12.)

(東借連常任弁護団)

東京借地借家人新聞より

 

東京・台東借地借家人組合

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