東京・台東借地借家人組合1

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【判例】*無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除権の消滅時効と起算点

2016年07月27日 | 譲渡・転貸借

最高裁判例

無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除権の消滅時効の起算点
最高裁 昭和62年10月8日 判決 民集41巻7号1445頁)



       主   文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。


       理   由
 上告代理人菅生浩一云同葛原忠知、同川崎全司、同丸山恵司、同甲斐直也、同川本隆司、同藤田整治の上告理由第1点について
 所論の点についての原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、畢竟、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用できない。

 同第2点について
  賃貸土地の無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除権は、賃借人の無断転貸という契約義務違反事由の発生を原因として、賃借人を相手方とする賃貸人の一方的な意思表示により賃貸借契約関係を終了させることができる形成権であるから、その消滅時効については、債権に準ずるものとして、民法167条1項が適用さ れ、その権利を行使することができる時から10年を経過したときは時効によって消滅するものと解すべきところ、右解除権は、転借人が、賃借人(転貸人)と の間で締結した転貸借契約に基づき、当該土地について使用収益を開始した時から、その権利行使が可能となったものということができるから、その消滅時効は、右使用収益開始時から進行するものと解するのが相当である。

 これを本件についてみるに、原審の適法に確定したところによれば、
(1)本件(一)土地の所有者である末正盛治は、大正初年ころ、六ノ坪合資会社(以下「訴外会社」とい う。)を設立し、同社をして右土地を含む自己所有不動産の管理をさせてきたものであるところ、上告人は、昭和34年6月22日、相続により、本件(一)土地の所有権を取得した、

(2)中村国義は、前賃借人の賃借期間を引き継いで、昭和11年7月29日、訴外会社から本件(一)土地を昭和15年9月30日までの約定で賃借し、同地上に3戸1棟の建物(家屋番号22番、22番の2及び22番の3)を所有していたものであるところ、被上告人中村慶一は、昭和20年3月17日、家督相続により中村国義の権利義務を承継した(右賃貸借契約は昭和15年9月30日及び同35年9月30日にそれぞれ法定更新された。)、

 (3)被上告人伊藤染工株式会社(以下「被上告人伊藤染工」という。)は、昭和25年12月7日、被上告人中村から前記22番の3の建物を譲り受けるとと もに、本件(一)土地のうち右建物の敷地に当たる本件(四)土地を訴外会社の承諾を受けることなく転借し、同日以降これを使用収益している、

(4)訴外会 社は、昭和51年7月16日到達の書面をもって被上告人中村に対し、右無断転貸を理由として本件(一)土地の賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした、と いうのであり、また、被上告人伊藤染工及び同濱田を除くその余の被上告人らが、本訴において、右無断転貸を理由とする本件(一)土地の賃貸借契約の解除権の消滅時効を援用したことは訴訟上明らかである。

以上の事実関係のもとにおいては、右の解除権は、被上告人伊藤染工が本件(四)土地の使用収益を開始した昭和25年12月7日から10年後の昭和35年12月7日の経過とともに時効により消滅したものというべきであるから、上告人主張に係る訴外会社の被上告人中村に対する前記賃貸借契約解除の意思表示は、その効力を生ずるに由ないものというべきである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認することがで き、原判決に所論の違法はない。論旨は、これと異なる見解に基づいて原判決を論難するものにすぎず、採用できない。

 同第3点について
 原判決が上告人の被上告人伊藤染工及び同濱田に対する請求に関して所論指摘の判示をしているものでないことは、その説示に照らし明らかであるから、原判決に所論の違法があるものとは認められない。論旨は、原判決を正解しないでその違法をいうものにすぎず、採用できない。

 同第4点について
  原審の適法に確定した事実関係のもとにおいて、被上告人伊藤染工、訴外会社ひいて上告人に対抗できる転借権を時効により取得したものということができるから、これと同旨の原審の判断は、結論において是認できる。論旨は、畢竟、判決の結論に影響しない事由について原判決の違法をいうものにすぎず、採用でき ない。

 よって、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。


    最高裁裁判長裁判官佐藤哲郎、裁判官角田禮次郎、裁判官高島益郎、裁判官大内恒夫、裁判官四ツ谷巖

 

 

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