東京・台東借地借家人組合1

土地・建物を借りている賃借人の居住と営業の権利を守るために、自主的に組織された借地借家人のための組合です。

【Q&A】 「家賃を滞納した場合」

2011年03月14日 | 民法・借地借家法・裁判・判例

【問】 月末に、うっかりしていて家賃を支払うの忘れました。家主は、契約書の「1か月たりとも家賃を滞納した場合は催告なく契約を解除できる」という条項を示して明渡を迫ってきました。応じなければならないでしょうか。


【答】  借家契約は、家賃を家主に払ってその対価として借家人が借家を使用するという契約ですから、家賃の支払いは借家契約の最も重要な部分です。従って、一般的に、家賃の不払は家主が借家契約を解除して明渡を求める大きな理由となります。

 しかし、借家人の側から言いますと、長い間借家をしていれば、何かの理由で1回や2回家賃の支払いができなかったということは有り得ることです。しかも、借家をしてそこで生活し、あるいは生活のための家業をしているわけですから、1回や2回家賃の支払和なかったという理由で簡単に借家契約が解除され明渡が認められたのではたまったものでありません。

 このように、建物の賃貸借は、売買などと違い、長い期間にわたる継続的な関係の上に成り立ち、そこで生活や営業が営まれているわけですから、そうした関係の中で、家主と借家人の権利義務を見ていかなければならないのは当然です。

 従って、家賃の不払が借家契約の解除の理由になるかどうかについても、継続的な契約関係の中で家主と借家人の信頼関係が破壊されたかどうかを基準にして考えていく必要があります。

 では、どのような家賃の不払が、信頼関係を破壊し借家契約解除の理由になるのでしょうか。 

 例えば、裁判所の判決を見ると7か月分の家賃を延滞した例で、延滞の原因にやむを得ない事情があり、催告期間経過後数日で延滞した家賃を提供していることなどを考慮して解除を認めなかった判決(神戸地裁昭和30年1月26日判決)がある反面、4か月分の家賃を延滞した例で、借家人側に不信行為があった場合に解除を認めた判決(東京地裁昭和34年4月8日判決)もあるなど、単純に家賃を延滞した月数だけで形式的に解除ができるかどうかが判断されるわけではありません。

 結局、家賃の不払で借家契約が解除されるかどうかは、不払の月数だけではなく、不払をした事情やそれまでの借家関係(例えば過去に不払をしたことがあるかどうかなど)を総合的に考慮し、信頼関係の破壊といえるかどうかを判断して決定されることになります。

 あなたの場合、家賃の不払が信頼関係を破壊したとは言えませんので、家賃を持参し(または送金し)、家主が受け取りを拒否した場合は、供託すればよいわけです。

 なお、あなたの場合、家賃の不払があったときは催告なしに借家契約の解除ができるという特約(無催告特約といいます)があるようですが、このような無催告特約は、催告なしで解除しても不合理とは言えないような事情がある場合には無催告で解除権を行使することが許されるという意味の約束で、その限度でのみ効力をもつとされています(最高裁判所昭和43年11月21日判決)。この判決に照らすと、あなたの場合、家主の催告なしの解除自体有効とは言えません。

 

東借連常任弁護団解説

Q&A あなたの借地借家法

(東京借地借家人組合連合会編)より

 

東京・台東借地借家人組合

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