(前回からの続き)
「Brexit」を決めた昨年6月の国民投票から約9か月後の先月29日、英国のメイ首相はリスボン条約第50条を発動し、同国のEU離脱手続きを正式に開始しました。英国は、もう二度と後戻りができない道に踏み出した—――そんな印象を受けます。長年にわたって築いてきたEUとの関係をオールクリアする決断を実行に移したわけですからね・・・
先述の事情からスコットランド住民の多くは「英国」首相のこのアクションを不安な気持ちで眺めたに違いありません。さらに、そんな英国とは離別、そして独自にEUとの関係を築けるようになるために、わたしたちは独立国になるべきだし、その是非を問う住民詰票を一刻も早く実施するべきだ、といった気運がスコットランドで高まりそうです。
ですが・・・それでもスコットランドの独り立ちは困難でしょう。このあたりは2014年の記事「独立の機を逸した?スコットランド」と題して長々と綴ったとおりです。国際収支や財政などの多くの面で脆弱なスコットランドにとっては独立ではなく英国残留を選択するほうがまだマシなことが明らかでした、当時は。で、いまはどうか、ですが・・・スコットランド唯一の(?)頼みの綱・北海油田はさらに枯渇に向かいつつあるうえ、当時1バレル100ドル超だった原油価格は半分の50ドルそこそこにまで急落してしまったので、スコットランドの悲願達成はいっそう厳しくなった感があります。なのでスコットランドは引き続き英国に留まったほうが良さげに思えますが・・・
・・・「その英国と一緒にあり続けたら、泥船に乗っているようなもの。英ポンドの止めどない下げが引き起こすインフレで住民はジリ貧必至だ!」―――たしかにそのとおり。Brexit以降は「ドル>ユーロ>ポンド」の図式が鮮明となり、上述のようにスコットランドの人たちを含む英国民は輸入インフレの激化に苦しめられているわけです。でもし、スコットランドが独立して、使用通貨をポンドからユーロに切り替えれば、「ユーロ>ポンド」であるため英国にいるよりはインフレが緩和されそう(?)。ということで、「英国といたら叶わないけれど独立したら通貨をユーロに切り替えられるかもしれない。そうなればこの激しいインフレとはおさらばできる!」―――これ、スコットランドの人々にとっては英国からの分離独立に向けた大きなインセンティブになり得ます(?)。
上記住民投票の再準備を進めるスコットランド民族党の二コラ・スタージョン党首は、スコットランドが独立しても通貨は引き続き英ポンドを使うことをほのめかしているようですが、こんな状況をふまえると、この先もポンドが対ユーロで下がり続けたら、前言を翻すかも・・・