(前回からの続き)
以前からの指摘のとおり、アメリカにとって、その「アキレス腱」(日本でいえば「エネルギー」のように、他国に依存するほかない国家的な弱点)すなわち「金利」(≒インフレ)リスクの顕在化を防ぐことができるたった一つの国が、日本になります。言い換えると日本は、万年経常赤字国のアメリカが吐き出し続けてきたドル(と米国債)を、ひたすら抱え込むことで、かの国の「金利」上昇(米国債価格低下)そして過度のインフレの発生を食い止める役割を担ってきました、昔から・・・って「終戦直後から」です。
まあ、そのあたりは本ブログでたくさん書いてきてはいますが、あらためて以下、簡単に振り返っておくと・・・
まず本稿で語っている金(ゴールド)に関連するところでは、金ドル本位制がそれなりに機能していた間、すなわちその終戦直後から1971年の「ニクソン・ショック」(アメリカによる金ドルの交換の一方的な停止)までの期間、(フランスなどと違って)日本は対米貿易等で稼いだドルの金への交換をアメリカに求めなかった(求められなかった)、ということ。その分だけアメリカは金を失わずに済みました。その何がアメリカにとってありがたいか、は、当時といまの金価格を比較すれば一目瞭然・・・って前者は1トロイオンス当たり35ドル、後者は前述のとおり同1900ドル台半ば、ということで、この間のドル預金金利等を勘案しても、差し引きで同千数百ドル相当の、本来ならば日本に渡さなくてはならない価値を、アメリカは自国に留め置くことができたわけです・・・
そして次はニクソン…直後から始まって現在に至る変動相場制でのもとのところです。この間、ご存じのように、日米の国際収支の違い(日本:黒字、アメリカ:赤字)等を反映して、ほぼ一貫して円高ドル安が進行しましたが、これアメリカにとっては、日本からの借入時よりも返済時のほうが(確実に円高ドル安になっているために)その債務の負担が軽くなることを意味します。具体的には・・・ニクソン…前の固定レートである1ドル360円から変動…移行後は、一時は同80円を下回る水準になるまで円高になりましたが、このレートを当てはめるとアメリカは「1ドル」つまり360円を日本から借りて、同じ「1ドル」(プラスわずかな金利)つまり80円あまりを返せば済む、ということになります(っても、実際にはもっと短いスパンでの借入・返済のサイクルになるが、どのみちアメリカの対日返済負担はドル安で軽くなっていく)。もちろん差額の2百数十円相当の価値は、これまたアメリカの利益に・・・
こうしてアメリカは、日本に対して借金(借「金」でもありますね)を重ね、そして事実上、それを踏み倒し続けることで「金利」(≒インフレ)リスクの顕在化を防いできた、といえます・・・って、それも戦後ずっと。当然ですが、これ日本からすればアメリカに国富をむしり取られるばかりのスキームです・・・が、いっぽうで、長年にわたってこの大ダメージを食らってきても、なお、かの国を支え続けられる・・・だけのパワーが、わたしたちにはある、ということになりますが・・・