ご存じのように、そして本ブログでは前稿でも述べたとおり、金(ゴールド)の価格が上昇を続けているところです。これ、金への需要が高まっているからこその当然の現象ですが、ではどうしてこれが旺盛なのか、については、何度も指摘済み、つまり、その金による米ドルの駆逐のプロセス―――ドルのインフレ化加速(金に対するドルの減価)がもはや食い止められなくなったことが誰の目にも明らかになったためにマネーの価値をドルから金に移す動きが急速に進む過程―――が本格化していることの表れ、でしたね前稿およびこちらの記事のとおり。
上記について、その動きがもっとも顕著な国は・・・(まあアメリカを除けば)やはり中国でしょう。実際、かの国は、ここのところ官民がこぞって金の保有量を急増させているようです。そのあたり先日の「Newsweek」によると、中国の金準備は今年2月に16か月連続で対前月比増となって約2257トンに達し、3月にはさらに5トン増えたとのこと。そして一般民衆のあいだでも金がブームとなっていて、昨年の金貨需要は16%近く拡大した、との由です。
でこの中国(をはじめとする各国[中銀等])の金の爆買いの背景について同記事は、地政学的な逆風(geopolitical headwinds)への対抗としてドル離れを進める中国の多様化目標の反映というエコノミストの見方を紹介・・・するいっぽうで、さりげなく(?)「not accounting for inflation」(インフレを考慮しているのではなく)と記しています・・・ってなワケがあるはずないでしょう、上記から中国はその(ドルの)インフレをMAX考慮し、超懸念しているから、こうして金シフトを急いでいるのですよ。でないのなら、地政学なんぞまったく意識しないであろう一般中国人まで金に走ったりするものですか。そのへんは・・・こうした動きの要因を地政学に見出そう(インフレではない!)と必死になるあたり、先般来指摘のとおり、Newsweekを含むアメリカの自身通貨ドルの止めどなき凋落を直視し得ない哀れさを感じずにはいられませんね・・・
ということで、いま中国は「上有政策下有対策」(上に政策あれば下に対策あり)の国にしてはめずらしく(・・・って、いや、共産中国の建国後はじめて?)、上(共産党幹部層)も下(民)もこうして100%一致して金に買い向かっているわけです。そのあたり、アメリカという他国の通貨であるドルのインフレ化が自国そして人民の共通の脅威となっている(から金の保有でこれに備えよう)という、かの国と人々のあせりがひしひしと感じられるところです・・・
・・・って、そりゃそうですよ。なぜなら、かの国は、その根幹をなす通貨が「疑似ドル」なのですから。具体的には、中国人民銀行(中国の中央銀行)の発行通貨「人民元」の価値を裏打ちする資産が実質的にはドル・米国債だということ。よって、中国(そして大半の新興国)にとっては、米ドルという劣化一途の資産を金に替えることは自身の資産価値(≒人民元の信認)と自国の対外的な信頼そのものの維持に向けた、地政学的・・・ではなく経済合理的な観点から至極当然のアクションといえるでしょう。