安倍政権の経済政策の最大の誤りは、「超金融緩和政策」が、「所得格差の拡大」と「富裕層の資産は海外に逃避」する効果を、想定していなかったことだ。
資本主義諸国では、成熟した経済成長段階では、「資本収益率[r]>[g]経済成長率」の原理どうりに、得られた利益は、海外に流れる。
つまり、大多数の国民の(物価上昇による)負担によって得られた名目上のおカネが(資本収益率のよい)海外に投資される。
この海外投資のリターンは、大企業と富裕層の資産を拡大させる効果になる。
国民の各層に均等におカネがいきわたる仕組みができていれば、金融緩和政策は有効に機能したかも知れない。
しかし、この20年間では、貿易自由化の流れと金融の自由化が大幅に進んで、
資本収益率の高い国が、各地に林立しているから、自国のおカネは海外に向く。
大きな視点で見れば、海外の経済発展に貢献するかもしれないが、その最大の受益者は、大資本家であり超富裕層に偏ってしまう。
各国の政府は、この偏ってしまうおカネを、富裕層から『勤労者の国民各層に安定した収入増加になる流れ』を創りだすのが、最大の責務なのである。
しかし、多くの先進資本主義国では、大資本家の優遇を競う政策ばかりで、自国への投資を優遇する税制度を競って、誘致を図る。
その段階はまだよいとしても、得られた利益に懸ける税金を、優遇する政策を競う様になり、【法人税減税】の引き下げ競争になる。
その減税分の不足は、消費税の増税や、社会福祉の保険金の増額などで賄い、国民の収入の中から多くのお金を、大企業優遇のおカネに回している。
政府は、この様に大企業を優遇して置かないと、海外の税金が安い国に移転してしまうから、必要な政策であると、国民に説明してごまかしてしまう。
つまり、大企業がいなくなると、「一番重要な雇用の安定」が失われる危険性が増大して、雇用不安の状況に陥り、政権は支持を失ってしまうのからだ。
グローバル化の進んだ20年間で、この流れは定着して、「資本収益率[r]>[g]経済成長率」の原理は、さらに、揺るがない事実となっている。
この「雇用の安定」を守ることばかりを優先すると、旧産業の保護政策が当然の流れになり、世界の技術進歩から遅れて行く。
バブル崩壊後の20年間に、グローバル化に晒されて「雇用の安定」を最優先にしてきたので、「新産業の育成」策は、おざなりでゴマカシてきた。(続)