「水素エネルギー社会」という言葉は、安倍政権が華々しく打ち上げて、マスメディアにたびたび登場するから、一般国民も関心が高くなっている。
しかし、残念ながら技術開発の方向は「完全に間違った手段」を選んでしまい、それに踊らされた民間企業や、地方自治体が無駄な投資をし始めている。
水素を超高圧で圧縮して貯蔵したり、使うことだけが、独り歩きを始めてしまっているのだ。
各地に燃料電池自動車用の【水素ステーション】の建設を計画して、貴重な税金を投入する動きも、広まってしまっている。
燃料電池自動車の普及などは、国家として急ぐ必要もないのに、「成長戦略の目玉」であるかの様な扱いを受けて、大金を投じて補助しているありさまだ。
むしろ、これから本格的に必要になる『エネルギーキャリア』の研究開発こそが、国の支援で加速しなければならない課題なのである。
「エネルギーキャリア」は聞きなれない言葉で、水素の貯蔵や輸送には便利になる「別の化学物質」のことを指す。
例えば、水素原子を6個捕獲する「メチルシクロヘキサン」があり、よく知られている「アンモニア」もある。
この化学物質は貯蔵に特別の設備も不要で、常温、大気圧での保存が可能だ。
危険性が最も少なく、エネルギーを採りだす必要に応じて、水素を分離して、消費するのに、扱いやすい。
エネルギーキャリアを構成する物質は、リサイクルできるので循環させる。
この様な技術はエネルギーの損失が少なく、経済性も将来は大きく進化する。
政府としての現状は、ホンの一部の研究開発に、補助金を支給している状況で、これではいつになったら本格的な実用化になるのか、心もとない状態だ。
政府は、燃料電池自動車の様な【花火のように華々しい研究対象】には、大判振る舞いの補助金を出すが、『経済の根幹の革新につながる技術』には冷たい。
洋上風力発電の普及拡大に不可欠の、「洋上風況マップ」の作成には、わずか2.5億円しか、政府からの助成金は出ない。
必要性が明確になってから2年も遅れているのに、この出し惜しみでは、今後の成果に結び付く可能性は疑問だ。
再生可能電力の普及促進策では、【需要が少ない時間帯の発電量が送電線に流せない問題】は、昨年の秋に発覚したが、その本格対策は手つかずだ。(続)