なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

心肺停止

2022年12月04日 | Weblog

 水曜日の当直は各地からの救急要請がきて大変だった。全部は受けられないが、当院の診療圏からの依頼は、当院で手に負える範囲で受けていた。

 救急外来担当の当直看護師は1名なので、救急車が搬入されると、それ以外のことはできない。病棟看護師も少ないので、急性期病棟と地域包括ケア病棟で、それぞれ一晩で1名だけしか受けられない。

 

 午前6時過ぎに、隣町の救急隊から当院の透析患者さんが心肺停止と連絡が入った。透析日は月・水・金のコースで前日に透析を受けていた。溢水による悪化は考えにくいようだ。頭か心臓かと思った。

 山間部からの搬入で病院までは30分以上かかる。心肺蘇生術を開始して、地域の基幹病院の指示(そういう決まりがある)で点滴を開始したということだった。

 最終生存確認は前日の午後9時で、家族が午前6時ごろに患者さんの自室に様子を見に行って、反応がないのに気づいた。その日は当院の神経内科と眼科の外来予約があり、またふだんのように早朝に起きてこなかったので見に行ったのだった。

 寝ている時に心肺停止に陥ったということになる。ということは、死後(実際はそうなる)数時間経過していると判断される。救急隊の報告からは、到底心肺蘇生に反応する状態ではないという感じが雰囲気として伝わってきた(やるべき処置はきちんとしているが)。

 

 予想通り、自動心臓マッサージ機が装着されて、ラリンジアルチューブ挿入による人工呼吸が施行されてきた。器械を止めると、心電図は心静止で、心肺停止・瞳孔散大・対光反射消失だった。

 アドレナリン注を繰り返して、心肺蘇生を継続したが、まったく反応はなかった。救急隊到着から30分以上、病院到着から30分の心肺蘇生で反応がなく、家族に説明して蘇生術を中止した。

 死亡確認後に、Autopsy imagingを行った。頭部CTは脳委縮のみで、頭蓋内出血(脳出血・クモ膜下出血)はなかった。胸腹部CTでは両側肺に肺水腫・うっ血を認めた。透析患者ではよくあるが、冠動脈3枝の石灰化が著明だった。

 寝る前はふだん通りで問題がなく、睡眠中に急激に心機能が低下したと判断される。報道でもよく聞く「虚血性心不全」と表現するしかない。

 

 出勤してきた腎臓内科の若い先生が見に来て、お世話様でした、と言われた。家族にも言葉をかけておられた。

 いつものことだが、自動心臓マッサージは回復の見込みがないという目でみると、拷問のように見えてしまう。救急車で30分以上かけて連れて来るとなれば、こうするしかないのではあるが。

 

 

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