なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

消化器病学会の続き

2016年04月23日 | Weblog

 消化器病学会の続き。「酸分泌抑制療法のパラダイムシフト」、は要するにカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(Potassium-competitive Acid Blocker,P-CAB)のボノプラザン(タケキャブ)の話。

 ボノプラザンを使用したピロリ菌除菌療法(ボノプラザン40mg/日+アモキシシリン1500mg/日+クラリロマイシン400~800mg/日)では、一次除菌も二次除菌も除菌率90%。PPIを使用した一次除菌は除菌率70%。一次除菌としてはボノプラザンが良いことになる(価格は高い)。一方、ピロリ菌耐性率の高いクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更した二次除菌では、ボノプラザンでも通常のPPIでも除菌率90%と同じになる。

 除菌失敗の原因としては、薬剤(特にクラリスロマイシン)、酸分泌が不十分、患者さんのコンプライアンス。クラリスロマイシンのピロリ菌耐性化が高いが、400mgより800mgで除菌する方が若干除菌率は高くなる。司会者の先生からは、ボノプラザン使用でも800mgで組み合わせる方がいいとう意見があった。また、メトロニダゾールを使用すればPPIでも除菌率が90%になるのであれば、メトロニダゾールを一次除菌で使用すればいいのではないかとも発言した。全国規模の学会で質問に立つ気はないが、それを質問したかった。消化器病学会は抗菌薬にあまり関心がない(知識がない)学会ではある。

 クロストリディウム・ディフィシル感染症の再発に影響する因子としては、75歳以上の高齢者、PPI投与、バンコマイシンン投与が関連するというカナダの論文があるそうだ。今回の発表ではPPIは影響しないのではというが。

 小腸疾患のワークショップを聴こうと思ったが、人気があって満席状態で込み合っていた。仕方なく、あまり人気のない「消化器から生活習慣病を診る」の会場に回った。最後に発言した信州大学の田中先生がわかりやすくまとめていた。日本は欧米に比して、糖尿病になりやすい、インスリン分泌能が低い、内臓脂肪の分布が違うという。WHOの統計によると、日本は肥満が少ない(BMIが30以上はほとんどいない)、高血圧症・高コレスロール血症は同程度、高血糖が多い、という。日本人は脂肪肝になりやすく、脂肪細胞に脂肪を蓄える能力が低い。高血糖より高脂肪食で肝発癌しやすい。NAFLD/NASHから肝硬変そして肝癌への進展が今後の課題になる。肥満に関連する消化器疾患は、バレット食道・腺癌、大腸腺腫・癌、膵癌、肝細胞癌、肝内胆管癌?、胆嚢癌がある。

 大腸疾患(炎症性腸疾患)はまったく聴かなかったので、代わりに「実践!IBD診療」医学出版を購入。自分で診療することはないので、このくらいの初心者向けの本で十分だ(わかりやすいし)。この3日間病院から連絡がまったく来なかった。これは珍しい。

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