なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

NSAID潰瘍

2016年04月11日 | Weblog

 施設からの紹介で94歳女性が受診した。2~3週間前から嘔気を訴えて、施設で点滴をしていたが、良くならないという。先月初めまで当院の循環器科にうっ血性心不全で入院して、退院後に入所していた。

 どこまで検査するかだが、案外元気なので外来でできることは一気に全部やることにした。うっ血性心不全自体は特に悪化していなかった。消化管検査は上部はできるとして下部は難しいと思われたので、まず胸腹部CTで明らかな消化管と膵臓の腫瘤の有無をみることにした。

 放射線科の女性技師から連絡が来て、右乳癌がありますということだった。右腋下リンパ節も腫脹していて、転移と判断される。肺と肝臓に転移は指摘できない。ただし、循環器科のサマリーにうっ血性心不全が全体に改善しているのに左胸水はとれないとあり、癌性胸膜炎かもしれない。

 この方は肝障害の既往があり、詳細は不明だが、CTでみると明らかに肝硬変だった(脾腫と軽度の腹水もある)。アルコール性・ウイルス性ではないので、自己免疫性肝炎か原発性胆汁性肝硬変が疑われる。

 これだけで食事をとれないのは説明がつかず、上部消化管内視鏡検査も行った。まず胃前庭部小彎に胃潰瘍があった。表面にコアグラが点状についている。そして十二指腸球部から後球部にかけて多発性潰瘍を認めた。全部に鮮血が付着していた。多発性出血性胃十二指腸潰瘍だった。

 この方は循環器科入院中の処方をみると、腰痛~下肢痛でセレコックスが処方され、PPI(ネキシウム)も処方されていた。施設に入所してからは処方が変更されていた。NSAIDはボルタレン(ジクロフェナク)になり、PPIからタガメット1錠になっていた。要するにNSAID潰瘍だった。NSAIDを中止して、点滴とオメプラール注で治療を開始した。

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