一昨日の夕方過ぎに、血液透析中の57歳男性が急に嘔吐して血圧が低下した。その日当直だった内科の若い先生が呼ばれて診察した。腹部膨満があり、手術の既往はないが、腸閉塞が疑われた。腹部CTで確認すると、小腸内にも造影剤は多少あるが、上行結腸から肛門側にかけての造影剤が目立ち、S状結腸から直腸にかけては内腔を閉塞するほどだった。これが原因なのか。
この患者さんは、5年前のCTと3年前のCTにも、同様の造影剤が認められた。当院では、透析患者さんに年に1回くらい検診としてCTが行われていた。普段は腹部症状がなかったのだろうか。昨年10月にもCTが行われていて、その時にはむしろ小腸内の造影剤が目立つが、大腸内にはそれほどなく、S状結腸から直腸にかけてはほとんどなかった。小腸から次第に肛門側に下がってきたのか。数年の経過で誰もCTで見える腸管内の造影剤を気にしていなかった?
肺炎が治癒した後に、嚥下訓練をすると発熱した94歳男性にどういう対応をするか迷っていた。認知症相当だが、案外元気だった。一時下肢(下腿末梢側から足)の血流が悪かったが、2日くらいで改善した。最近は80歳代後半の患者さんには胃瘻造設は勧めていなかったが、この方にはやってみることにした。車いすに移乗しての散歩ができそうだったから。家族で相談してもらって、息子夫婦が同意された。
「臨床消化器内科」という雑誌がある。2004年9月号は「イレウス診療のpitfallーいつ外科に送るか」の特集だった。消化器内科とはいえ、内科の雑誌でイレウスの特集をするのは珍しいので購入していた。当然だが、執筆者は全員外科医だった。その後内科系雑誌でイレウスの特集をしたのは診たことがないから、これはレアものだ。その中に非閉塞性腸管虚血症non-occlusive mesenteric ischemia(NOMI)の項目がある。高齢者でNOMIと判断されるの症例があって、結局亡くなられた。