
かなり楽しい小説でした。
今回ご紹介するのは「キケン」(著:有川浩)です。
-----内容-----
ごく一般的な工科大学である成南電気工科大学のサークル「機械制御研究部」、略称【キケン】。
部長・上野、副部長・大神の二人に率いられたこの集団は、日々繰り広げられる、人間の所業とは思えない事件、犯罪スレスレの実験や破壊的行為から、キケン=危険として周囲から忌み畏れられていた。
これは、理系男子たちの爆発的熱量と共に駆け抜けた、その黄金時代を描く青春物語である。
-----感想-----
これは楽しく読めそうだと思い手に取った一冊。
期待どおり、最初から最後までかなりの面白さでした

新入生の元山高彦と池谷悟の二人が勧誘されたのは、機械制御研究部、略称「機研(キケン)」というクラブサークル。
部長は二回生の上野直也。
渾名は「成南のユナ・ボマー」で、ユナ・ボマーとは世界一有名な爆弾魔の名前とのことです。
何やらやばそうな渾名ですね

副部長は同じく二回生の大神宏明。
こちらの渾名は「大魔神」。
めちゃめちゃ怖い雰囲気を醸し出している人で、ただその場に居るだけで威圧感があります。
この二人がキケンを引っ張っていくわけですが、まあとにかく部長の上野のハチャメチャぶりが最初から最後まで半端ではなかったです(笑)
特に自分の家からも出入り禁止を食らっているというエピソードがウケました。
火薬の燃焼実験やらロケット花火の発射やら、部屋で危険なことばかりしているので母屋から隔離されてプレハブ小屋で暮らすようになったとのことで、なかなかぶっ飛んだ人だなと思いました

突っ込みが役どころとなった元山は盛大に突っ込みまくっていました(笑)
上野と上野の天敵・曽我部教授のやり取りは何だか「こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)」の両津勘吉と大原部長のような関係でした。
「げっ部長」「こおら両津!」のような感じで、上野が危険極まりないアホなことをすると竹刀を持って追いかけていました(笑)
第一話のラストに書かれていた、「この年から上野・大神体制による【機械制御研究部】―通称【機研】の三年にわたる黄金時代が始まる」というナレーションはワクワクしました。
どんな黄金時代を見せてくれるのか、第二話以降も楽しみになりました

大神の失恋の話もまたかなりウケました。
大魔神と呼ばれ圧倒的な威厳と威圧感を持つ大神の恋愛話、面白かったです。
学園祭の話はかなり盛り上がりました。
「成南祭」という名前で、11月の上旬に開催されます。
準備の1日を入れると6日間ぶっ通しで行われる怒涛のような学園祭で、キケンは伝統的に毎年ラーメンの屋台を出しています。
これが半端ではない全力投球で、毎年売り上げは90万円にも上っています

特にこの年は元山が料理が得意なこともあって、例年とは比較にならないほどラーメンの味もアップ

前後編の二話に渡って展開された学園祭編はこの作品の中でも一番面白かったです。
キケン史上最高のラーメンを作るための元山の試行錯誤、学園祭での後に伝説として語り継がれることになる大奮戦、さらにはキケンに嫌がらせばかりしてくる因縁の敵・PC研(たぶんパソコン研究部)との対決もあったりで、読んでいてかなり盛り上がりました。
終始笑って読んでいられる小説で、最初から最後まで楽しかったです。
まさに馬鹿ばかりやっている青春時代を地で行く物語でした。
たまにはこんな小説を読むのも良いなと思います

※図書レビュー館を見る方はこちらをどうぞ。
※図書ランキングはこちらをどうぞ。