読書日和

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「スコーレNo.4」宮下奈都

2013-04-02 22:34:01 | 小説


今回ご紹介するのは「スコーレNo.4」(著:宮下奈都)です。

-----内容-----
自由奔放な妹・七葉(なのは)に比べて自分は平凡だと思っている女の子・津川麻子。
そんな彼女も、中学、高校、大学、就職を通して4つのスコーレ(学校)と出会い、少女から女性へと変わっていく。
そして、彼女が遅まきながらやっと気づいた自分のいちばん大切なものとは……。
ひとりの女性が悩み苦しみながらも成長する姿を淡く切なく美しく描きあげた傑作。

-----感想-----
この小説を知ったのは「書店ガール」(著:碧野圭)がきっかけです。
書店ガールの作中で
「ツイッターをやっている書店員たちが共同戦線を張って盛り上げ、売れた文庫もある。宮下奈都の『スコーレNo.4』がその典型だ」
とあり、興味を持ちました。
Twitterで書店員の方々が「秘密結社」なるものを結成し、大好きな本として全国の書店(その数約100店舗)で大プッシュして共同戦線を張ったという作品。
現場の書店員さん達がそれだけ推す作品ということで読んでみたいなと思うようになりました。

物語は「No.1」「No.2」「No.3」「No.4」からなる四部構成。
この4つのスコーレ(学校)を通して主人公・津川麻子の成長する姿が描かれています。

「No.1」は、中学生。
麻子は12歳と11ヵ月、中学に入って3ヶ月が過ぎたところ。
妹の七葉は一学年下で、小学六年生。

物語は麻子の視点で語られていきます。
とても淡々とした文章です。
そして文庫本の裏表紙に書いてあったとおり、淡く切なく美しい物語です。
文章は淡々としているのに、すごく瑞々しさのある物語なのが特徴的です。

「No.2」は、高校生。
高校一年の麻子が抱く、従兄の槇と、妹の七葉を巡る心の葛藤がメインでした。
麻子は、いざという時の七葉の行動力や意思の強さにはかなわないということを悟ります。
そして七葉から離れたいと思うようになります。
七葉に対して強い劣等感を持っていました。
「だけど私は負けているのだ。七葉のそばにいたら、きっとずっと負け続ける気がした」
小さい頃からよく同じものを好きになる姉と妹、そして勝つのは毎回妹のほう。
そんな妹から離れたいと思い、大学進学を機に麻子は家を出て一人暮らしをすることに。

「No.3」は、序盤が大学生でその後は社会人になります。
大学三年になった麻子は就職活動を開始。
自分が何をしたいのか漠然としている麻子でしたが、得意の英語を生かして輸入貿易会社に入社することになりました。
配属になったのは靴を輸入する部門でしたが、すぐに「靴屋」に出向になってしまいます。
そこで現場を経験してこいということでした。
しかしその現場に馴染めず毎日思い悩む麻子。
「心の底から何かを愛したり欲したりすることのできる人と、そうはできない人がいる。私は後者だった」
靴というものを愛することが出来ず、それ故に仕事に対してもやりがいを見出だせずにいました。

やがていつの間にか靴屋で働きだして一年が過ぎようとしていました。
毎日、仕事に対して自信が持てずに働いていた麻子でしたが、実はいつの間にか成長しつつありました。
実家がマルツ商会という骨董品屋で幼い頃から色々な骨董品を見て育った麻子は、「物を見る目」は人一倍優れたものを持っていました。
それは靴屋の店長はじめ同僚達も認めるところで、最後のほうでは素晴らしい靴屋の店員さんに成長していました。
何に対しても自信の持てない麻子が、周りからその力を誉められて、初めて仕事に対して光明を見出だしていました

「No.4」は、社会人三年目。
出向先の靴屋から戻ってきた麻子は、本社での事務仕事に思わぬ苦戦を強いられていました。
二年間の靴屋での経験で芽生えつつあった自信が再びしぼみかけていました。
そんなある日、麻子はイタリアに出張に行くことになります。
同僚の先輩二人に付いての出張で、そこで麻子は靴の買い付けをすることになりました。
そのイタリアで、ついに仕事のやりがいと自分への自信を見出だす麻子。
「靴を選びながら、なんと気持ちのいい仕事だろうかと何度もため息を漏らしそうになった」
「No.4」では、仕事でも恋愛でも大きく飛び立っていきました。
妹の七葉へのコンプレックスもなくなり、ようやく自分に自信を持てるようになった麻子の、なんと清々しい心境かと思いました

一人の女性が中学一年生から25歳になるまで乗り越えてきた、様々な困難や苦しみ。
恋に敗れたこともあったし、毎日を漠然と希望も持てずに過ごす日々もありました。
そんな麻子がついに羽ばたいていった「No.4」。
私は嬉しかったです。
なんて瑞々しい物語なのでしょうか。
なんて美しい物語なのでしょうか。
とても線の細い文章が、主人公、麻子の儚さを表していて、そこに美しさがありました。
湖から水をひと掬い掬い上げて、そこにキラキラと日の光を当ててくれるような物語
書店員さん達が熱烈に支持するのも納得の名作だと思います。


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