Sightsong

自縄自縛日記

ヴィム・ヴェンダース『ベルリン・天使の詩』

2018-02-25 09:11:00 | ヨーロッパ

ヴィム・ヴェンダース『ベルリン・天使の詩』(1987年)を観る。もう学生の頃以来だからゆうに20年以上ぶりの鑑賞である(DVDを買った)。

歴史が始まってからずっと人間を観察し、静かに守ってきた天使たち。そのひとりダミエル(ブルーノ・ガンツ)が、自分の身体で実感できる世界や、自分の作る歴史をもとめて、人間になる。きっかけのひとつは、サーカスの踊り子マリオン(ソルヴェーグ・ドマルタン)の存在でもあった。

何しろ、ベルリンの壁があった28年間の末期に撮られたフィルムである。革命が起きて市民により壁が壊されるのは、このわずか後なのだ。それに向かう予感や予兆があったのだろうか、それともあくまで希望だったか。

大事な場所はポツダム広場。壁があるために荒れ地となっており、かつての繁栄を知る歌い手が歩いてきて、その変わりように絶望している。ダミエルは自分自身の時代を作ると決意する。そして人間になって再会するマリオンは、ダミエルに対し、主体として私・あなたよりも「広場」(platz)を何度も口にする。すなわち、映画は個人の物語を超えて、新たな社会の胎動と人間のつながりに向けた大きな物語として提示されていたように思えてならない。

先日ポツダム広場を訪れたところ、壁の一部がモニュメントとして残されて開発されており、この映画の雰囲気などまるで感じられない場所となっていた。その何日かあと、壁がなくなってからの時間が、壁が存在していた時間を超えてしまった。

●参照
ヴィム・ヴェンダース『パレルモ・シューティング』
ヴィム・ヴェンダース『ランド・オブ・プレンティ』、『アメリカ、家族のいる風景』
ヴィム・ヴェンダース『ミリオンダラー・ホテル』


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