Sightsong

自縄自縛日記

ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』

2012-09-08 13:39:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(clean feed、2009年)を聴く。

Peter Evans (tp)
Ricardo Gallo (p)
Tom Blancarte (b)
Kevin Shea (ds)

この人の音楽は、最近の『Ghosts』(More Is More、2011年)でも強く印象付けられたことだが、聴き手がジャズという構造世界に対して持っている感覚の解体と再構築を迫るものである。

ベースやドラムスによって、複数の同時並行するテンポやラインがどんどん変化していく。まるで、筏のそれぞれのパーツが別々の方向に動き出し、立地点を見いだせないような。その中をエヴァンスのトランペットがビャーと切り裂き、ときに離れ離れになった要素をグルーでつなぎ合わせる。そして筏の運動はスタイリッシュな音楽となっている。これは聴いていて心臓がばくばくするようで気持ちが良い。よくいるジャズ好きを自称するオヤジ(偏見に基づく典型)が聴きながら身体でリズムを刻んでいくことを許さないのだ。

曲も実は愉しい。「All」は「All the Things You Are」、「Palimpsest」は「Lush Life」と「Duke Ellington's Sound of Live」、「What」は「What is This Thing Called Love」を基にした作曲である。リー・コニッツが原曲を完膚なきまでに解きほぐしまた組み上げたことを思い出せば、これならば、原曲名を掲げてもよかった。また、「For ICP」は言わずもがな、ICPオーケストラに捧げた曲であり、音を発して絡み合う嬉しさに満ちている。

●参照
ピーター・エヴァンス『Ghosts』


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