フレッド・フリス+ニコラス・フンベルト+マーク・パリソット『Cut Up The Border』(RogueArt、2019年)を聴く。
Fred Frith (g, b, org, p)
Nicolas Humbert (composition)
Marc Parisotto (composition)
ニコラス・フンベルトとヴェルナー・ペンツェルによるドキュメンタリー映画『Step Across The Border』(1990年)は大変な傑作だった。旅するギタリストのフレッド・フリスを追いつつ、ジョン・ゾーン、ティム・ホジキンソン、イヴァ・ビトヴァ、アート・リンゼイ、Haco、ケヴィン・ノートン、トム・コラら癖のある面々のうごめきを捉え、このぐちゃぐちゃの社会に生きることを無数の意思の泡立ちで表現しおおせたものとなっていた。良いサントラもあった。
本盤は、その際に集積された録音のフラグメンツを、映画を撮ったフンベルトらがコラージュし、フリスも音を加えた作品である。ジョナス・メカスの声が遠くから聴こえ、ビトヴァやパヴェル・ファイトやコラやゾーンらしき音もまた現れては去っていく。「Clapping Rain」の雨音など奇妙に感動的。
結果的にこの素晴らしいノマドとマルチチュードの語り直しとなっている。
●フレッド・フリス
フレッド・フリス『Storytelling』(2017年)
ロッテ・アンカー+フレッド・フリス『Edge of the Light』(2010年)
フレッド・フリスとミシェル・ドネダのデュオ(2009年)
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
高瀬アキ『St. Louis Blues』(2001年)
突然段ボールとフレッド・フリス、ロル・コクスヒル(1981、98年)
『Improvised Music New York 1981』(1981年)
●ニコラス・フンベルト
ユセフ・ラティーフの映像『Brother Yusef』(2005年)
アート・アンサンブル・オブ・シカゴの映像『Null Sonne No Point』(1997年)
ニコラス・フンベルト『Wolfsgrub』(1985年)