Sightsong

自縄自縛日記

ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+細井徳太郎@下北沢Apollo、+外山明+大上流一@不動前Permian

2019-04-03 00:27:48 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のApollo(2019/4/1)、不動前のPermian(2019/4/2)。

■ 2019/4/1

Joachim Badenhorst (cl, bcl, ts, p)
Sissel Vera Pettelsen (vo, effect, jew's harp)
Tokutaro Hosoi 細井徳太郎 (g, effect)

シセルの低い声が自身の声とエフェクターで重ね合わされ、細井さんがギリギリと擦る音とのインタラクションがいきなり生まれる。ヨアヒムはバスクラからピアノ、またクラに取り換え、切なくも不穏でもある雰囲気を静かに創出した。細井さんは右手で弦を細かく弾き、左手でエフェクターを操っている。それがバスクラとヴォイスとがシンクロする横で太い明滅となったりも泡立ったりもする。ヨアヒムのバスクラの重音には聴き惚れてしまう。

ここでシセル、ヨアヒムともに小休止するが、細井さんはひとりで強い意思を示すようにエフェクターの音を出し続けた。ヨアヒムはマウスピースを外してクラを吹き、尺八のような音を発する。これが細井さんの擦る弦の音と奇妙に重なり、エフェクターの音は別次元へと移行した。

セカンドセット。シセルの小鳥の声と細井さんのボトルネック、撥音と撥音とが重なり、さらにヨアヒムもテナーで撥音を出す。また、ヨアヒムの重音と、シセルが口を開かずに発する高音とが重なる。ここでヨアヒムは背後のバーやトイレに歩いてゆき、そこでもテナーを吹いた。シセルは民謡のように歌い、ヨアヒムはクラで電子音のごとき細かい破裂音を出す。細井さんは小刻みに弦を叩き、金属的な音を放つ。

ヨアヒムのピアノの横で、シセルが切々と「raindrops, raindrops, raindrops」と歌う。ここでシセルと細井さんの創る音は何かの残滓のようであり、ヨアヒムはテナーの震える音でそれに応じた。シセルの息と、ヨアヒムがマウスピースなしでクラを吹き、また歌いもした。細井さんはエフェクター中心からギターへと戻ってきて、悪夢のようにフレーズを繰り返す。そしてシセルは口琴を使い、それがどこかに当たった金属音も含めてエフェクターで再現されたのだが、なんと、ヨアヒムはバスクラで口琴のような音を出した。驚いた。

展開の早い、素晴らしいインプロだった。

■ 2019/4/2

Joachim Badenhorst (cl, bcl, ts)
Sissel Vera Pettelsen (vo, effect, as)
Akira Sotoyama 外山明 (ds)
Riuichi Daijo 大上流一 (g) 

ファーストセット。外山さんがスティックでシンバルを擦り、その音の模索はヨアヒムのクラにも伝染する。やがてシセルが歯車のごときうなりを発し、ヨアヒムが循環呼吸で重音をみせた。ドラムスとヴォイスとの静かな交感があり、そのふたりとも音を多様化させてゆく。シセルがベースパターンのようなエフェクトを入れ、新鮮な雰囲気が流れ込む。

外山さんは静かにテンポを変え始め、さらに自在化してゆく。叩きの音圧が強くなってもきた。シセルはシルクのように滑らかなヴォイスを発し、エフェクターによって分身し、ふたりのシセルとなったりもした。ここでシセルはついに(このツアーでははじめて)アルトを取りだし、まずはネックだけを持って吹く。ヨアヒムもバスクラのネックだけを取り、フクロウのごとき音を出した。ヨアヒムがネックを本体に装着するとシセルも同様に装着する。

このあたりで外山さんはドラムスで走り出してサウンドを引っ張ろうとしているようにみえる。外山明世界のはじまりである。アルトとテナーとは「ジャズ」のように重なって聴こえる。

セカンドセットでは大上さんが加わった。そのギターに応じて、ヨアヒムがテナーで細切れに吹き、また魅力的な重音を発する。外山さんはちょっとインターバルを置いては強くタイコを叩いている。シセルとヨアヒムとがさまざまな音を重ねている間、大上さんは平然とギター演奏を続けており、その静かなところからの響きが印象的だった。また、シセルのホワイトノイズのようなヴォイス、声かと勘違いしてしまう外山さんの擦り、ヨアヒムの親指ピアノやトイ、これらが同じ地平で泡立っている。

ヨアヒムが再度バスクラで吹き始めてから、サウンドが少し明るいものになった。その上でシセルや外山さんの音が激しくなった。いちどは演奏が終わるかと思ったのだが、天井からノイズが聴こえてきても誰も終えようとせず次の準備をしている。外山さんは祭のごとき音を、ヨアヒムはクラのマウスピースを外しての尺八のような音を、大上さんは異音を出している。そしてまた終息に向かい、外からバイクの音が聴こえ、演奏が終わった。とくにセカンドセットはひりひりとした緊張感のある演奏であり、印象的だった。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ヨアヒム・バーデンホルスト
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)
Poem of a Cell Sound / Film Installation & Concert in Tokyo@ドイツ文化センター(2018年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
ギレルモ・セラーノ+ヨアヒム・バーデンホルスト+マルコス・バッジャーニ『Lili & Marleen』(2016年)
LAMA+ヨアヒム・バーデンホルスト『Metamorphosis』(2016年)
ハン・ベニンク『Adelante』(2016年)
安田芙充央『Erik Satie / Musique D'Entracte』(2016年)
ダン・ペック+ヨアヒム・バーデンホルスト『The Salt of Deformation』(-2016年)
ヨアヒム・バーデンホルスト『Kitakata』(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Garlic & Jazz』(JazzTokyo)(2015年)
カラテ・ウリオ・オーケストラ『Ljubljana』(2015年)
パスカル・ニゲンケンペル『Talking Trash』(2014年)
ヨアヒム・バーデンホルスト+ジョン・ブッチャー+ポール・リットン『Nachitigall』(2013年)
ハン・ベニンク『Parken』(2009年) 

●シセル・ヴェラ・ペテルセン
ヨアヒム・バーデンホルスト+シセル・ヴェラ・ペテルセン+北田学@渋谷Bar subterraneans(2019年)

●細井徳太郎
合わせ鏡一枚 with 直江実樹@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
SMTK@下北沢Apollo(2019年)
伊藤匠+細井徳太郎+栗田妙子@吉祥寺Lilt
(2018年)

●外山明
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年)
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年)
西島芳 trio SONONI@下北沢Apollo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
Shield Reflection@Ftarri(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
『SONONI, Laetitia Benat』(2016年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)

●大上流一
謝明諺+大上流一+岡川怜央@Ftarri(2018年)
Shield Reflection@Ftarri(2017年)
『OTOOTO』(2015、17年)
リアル・タイム・オーケストレイション@Ftarri(2016年)


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