Sightsong

自縄自縛日記

カーラ・ブレイ@ケルンStadtgarten

2019-05-25 14:19:27 | アヴァンギャルド・ジャズ

2月にドイツに来たときにサックスのフローリアン・ヴァルターが送ってくれたリンク集を一応確認していたら(ジャズ旅のつもりではないので)、到着する日にカーラ・ブレイが演奏する(2019/5/24)。驚いてすぐに予約した。

カーラは昨年は韓国まで来たが日本には立ち寄らなかったし、スティーヴ・スワロウはスティーヴ・キューンのトリオで来日するはずが(2年前?)、キューンの怪我で中止になった。アンディ・シェパードは9年前にパリのSunsetで観て以来である。そんなわけで思わぬ機会が出来てとても嬉しい。

デュッセルドルフの宿に荷物を置いて、ダンスの皆藤千香子さんと少しおしゃべりして、駅のLe Crobagというフランス風の店でコーヒーとサンドイッチを買って、すぐに電車でケルンに向かった。立ち見も出た。この場所で演奏するのは25年ぶりだそうで、隣の席に座った人は29年前にやはりここでカーラのビッグバンドを観たんだよと嬉しそうに話してくれた(その人は、佐藤允彦とアッティラ・ゾラーとのデュオ盤が好きだそうだ)。

Carla Bley (p)
Steve Swallow (b)
Andy Sheppard (ts, ss)

カーラ・ブレイ83歳、スティーヴ・スワロウ78歳。健康など大丈夫なのかなと思ったが、それは杞憂だった。

前半はこの2、3年でカーラが作曲したものが中心。カーラの音数は多くはないが、和音を提示するたびに、深い哀しみと悦楽のカーラ色が強く展開される。そしてスワロウの音数も多くはない。ギターのような音色はエロチックに研ぎ澄まされており(氏は演奏前と休憩中に入念に確認していた)、それがカーラの音とふわりふわりと回り合う。そこには余計な力など何もない。嬉しくて泣き笑いしながら観てしまう。

62歳のアンディ・シェパードの方が、前よりも枯れたかなという印象があったが、それだって悪い印象ではない。特にテナーは大気に溶けるような感覚でとても良い。ソプラノでのノイジーなマルチフォニックもまた見事。

ファーストセットの最後に演ったカーラのオリジナル「Beautiful Telephones」はドナルド・トランプに捧げたのだとシェパードの弁、どこまで冗談なのかわからず会場も微妙な笑いが起きる。セカンドセット冒頭は「Life Goes On」だったか、それも含めて、底知れないユーモアと人生の機微とがあって、たまらない気分になった。

最後に、この日初めて他の人の曲を演った。カーラ曰く、Mr. Misteriousの曲だ、と。やはりセロニアス・モンクの「Misterioso」だった。このトリオの『Songs with Legs』と同じアレンジで、最初にテナーが新しい世界を拓くように吹いたあと、おもむろにピアノでミステリアスな世界に移行する。やがてブルージーになり、また戻ってくる。

アンコールは「Utviklingssang」。言うまでもなく渋谷毅オーケストラのレパートリーでもある名曲、わたしも含めて思い入れのある人が多いだろう。スワロウのベースからゆっくりと始まり、カーラが哀しみの和音を重ね、アンディのテナーがそれを増幅する。もう、どうしようという気持ちにしかならない。

終わってから、サインをいただけないかなと待っていたら、同好の士が何人か。チリから勉強に来ているんだという男は、『Escalator Over The Hill』のヴァイナルを大事に持ってきていた。スワロウが楽屋に招き入れてくれて、みんなにサインの場所まで指示してくれた。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●カーラ・ブレイ
カーラ・ブレイ『Andando el Tiempo』(2015年)
チャーリー・ヘイデンLMO『Time/Life』(2011、15年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ(1988年)
スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(2011年)
ポール・ブレイ『Homage to Carla』(1992年)
ポール・ブレイ『Plays Carla Bley』(1991年)
ゲイリー・バートンのカーラ・ブレイ集『Dreams So Real』(1975年)
ザ・ジャズ・コンポーザーズ・オーケストラ(1968年)
スペイン市民戦争がいまにつながる

●スティーヴ・スワロウ
スティーヴ・キューン『To And From The Heart』(-2018年)
カーラ・ブレイ『Andando el Tiempo』(2015年)
スティーヴ・キューン『Jazz Middelheim 2015』(2015年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
チャーリー・ヘイデンLMO『Time/Life』(2011、15年)
スティーヴ・スワロウ『Into the Woodwork』(2011年)
ケニー・ホイーラー『One of Many』(2006年)
ポール・モチアン『Flight of the Blue Jay』(1996年)
日野元彦『Sailing Stone』(1991年)
ゲイリー・バートンのカーラ・ブレイ集『Dreams So Real』(1975年)
ゲイリー・バートン+スティーヴ・スワロウ『Hotel Hello』(1974年)
アート・ファーマー『Sing Me Softly of the Blues』(1966年)
ポール・ブレイ『Complete Savoy Sessions 1962-63』(1962-63年)

●アンディ・シェパード
カーラ・ブレイ『Andando el Tiempo』(2015年)
カーラ・ブレイ+アンディ・シェパード+スティーヴ・スワロウ『Trios』(2012年)
アンディ・シェパード『Surrounded by Sea』(2014年)
キース・ティペット+アンディ・シェパード『66 Shades of Lipstick』、シェパード『Trio Libero』(1990年、2012年)
アンディ・シェパード、2010年2月、パリ
ケティル・ビヨルンスタ『La notte』(2010年)
アンディ・シェパード『Movements in Color』、『In Co-Motion』(2009年、1991年)


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