Sightsong

自縄自縛日記

Naimレーベルのチャーリー・ヘイデンとピアニストとのデュオ

2009-01-13 00:32:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

英国のNaimというレーベルは音響に大きなこだわりがあるようで、ウェブサイトを開くといきなり2万ドル以上するCDプレイヤーが登場する。そんなところだから、新しい音源であっても、CDと重量版LPの両方で発売していたりする。

ここから、チャーリー・ヘイデン(ベース)がピアニストとデュオでの共演を行ったアルバムが2枚出されている。クリス・アンダーソンと組んだ『None But the Lonely Heart』(1998年)、ジョン・テイラーと組んだ『Nightfall』(2003年)である。私は気紛れで前者はLP、後者はCDを持っている。

『None But the Lonely Heart』(1998年)でのクリス・アンダーソン(1926年生まれだから、録音時72歳くらい。ハービー・ハンコックの教師でもあった)は、洗練されたメロディーを弾くのでもなく、流麗な和音もなく、一聴して「どんくさい」イメージを受ける。したがってヘイデンも華麗に絡んでいくわけではない。しかし何とも不思議な魅力があって、ふたりの哲学者の対話を聴くような感覚をおぼえる。ヘイデンは、アンダーソンのピアノについて「クリスは全てのコードに人生を賭けている」と評したというが、聴くこちらにとっては、「クリス」を「ふたり」に置き換えたくなる。

「I Hear a Rhapsody」や「Body and Soul」などのスタンダードは含蓄があって、最後の「CC Blues」では安堵する(CCはふたりのことかな)。CDではさらに「It Never Entered My Mind」や「Good Morning Heartache」が収録されている悔しさはあるが、この含みを聴くにはLPが良かったに違いない。

というのも、『Nightfall』(2003年)をこの後に聴くと、やはり抜けの良すぎるCDの特性が明らかになるからだ。抜けが良いということは、心にしこりも残りにくいということなのだ。

ただ『Nightfall』も素晴らしくて、聴き始めると最後まで続けて聴き惚れてしまう魅力がある。ここではジョン・テイラーという手練れとの絡みと静かな相互作用が素晴らしく、対話というより昇華という表現が相応しいようにおもわれる。「Windfall」(って、棚ぼたの意味でよく使うけど・・・)での浮上と沈潜の感覚、「Song for the Whales」でのヘイデンによる鯨の声と哀しみ、それからヘイデンの名曲「Silence」の美しさなど、聴き所が多いアルバムだ。ピアノとベースでの「Silence」といえば、『Charlie Haden / Egberto Gismonti in Montreal』(ECM、1989年)での、理性で感情の昂りを抑えたようなジスモンチとの大きくうねる押し引きを思い出すが、こちらの静謐なそれも甲乙つけがたいとおもっている。

●参照 リベレーション・ミュージック・オーケストラ(スペイン市民戦争)


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