Weasel Walter (ds)
Mary Halvorson (g)
Peter Evans (tp)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(Thirsty Ear、2012年録音)を聴く。
同メンバーによる前の作品『Electric Fruit』(2009年)では、さまざまな音色やシーンを次々に眼前(耳前?)に展開してくれて、和音のコードのみならず、ジャズというコード(共通言語)からの逸脱も見えて愉しかった。
本作では、さらにその意思をあけすけに開示しているようで、聴いていて、こちらの脳が分裂し、雲散霧消するプロセスが愉快である。もはや、大きな物語(これだって、コードである)による回収を許さないのだ。ウォルターの遊び心満点のドラムスも、ハルヴァーソンが自在に音色を変え続けるギターも、それから、管という性質(これだって、やはり、コードである)からの逸脱と回帰を余裕でおこなうエヴァンスのトランペットも、何かに還元されるわけではない。
だからといって、これをもって「いまのジャズ」などと言ってしまっては、廻り廻って、歴史や時間や物語やジャズというコードに寄り添ってしまう言説に堕すことになる。面白いものである。聴きながら自動的に脳内で何かに変換しようとすると、タイトル通り、「機能不全」になるわけだ。
●参照
○ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』
○ピーター・エヴァンス『Ghosts』
○ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』