南青山のBody & Soulで、片倉真由子レコーディングライヴ(2019/2/7)。
Mayuko Katakura 片倉真由子 (p)
Yasuhiko "Hachi" Sato 佐藤 "ハチ" 恭彦 (b)
Gene Jackson (ds)
冒頭の長いソロ、オリジナル「Echo」なのだが、たとえば「Nefertiti」のような断片も影のように現れ、いきなり惑わされる。そのままトリオで「Secret Love」に移行した。続くオリジナル「Monk's Walking」はスピードも旋律もモンクらしい感覚であり、ベースがぶんぶんとよく唸る。横から彩るピアノ。「Ruby, My Dear」(モンク)でも長いピアノソロからトリオへ、ジーン・ジャクソンのブラシが見事。片倉さんのピアノは慣性をもって縦横に滑る。
ここでなぜか片倉さんはデイヴィッド・ブライアントの話をした。彼のピアノ演奏の影響は最近すごいものがあるそうで、実際、NARUでもSatin Dollでもお互いにシットインする良い場面を目撃したばかりである。確かに以前、レイモンド・マクモーリンと片倉さんのデュオを観た帰りに駅まで歩きながらデイヴィッドの話をしていると、片倉さんも、自分も好きだと言った。
そのことと関係あるのかどうか、「Pinocchio」(ショーター)。この三者での疾走ぶりは、『The Echos of Three』での同曲の演奏を凌駕している。ジーンのドラムソロを凝視し続け、またおもむろにトリオに戻る片倉さん。複雑な三者の差し手争いは、巧妙な細工箱を思わせた。
セカンドセットは「Unconditional Love」(ジェリ・アレン)から。同じフレーズの繰り返しがジェリ、そこからピアノとベースとがいきなりハモる気持ちよさが半端ない。勢いに乗った片倉さんは知的な官能性を発揮し、そのプレイに千手観音を幻視した。続くオリジナル「A Dancer's Melancholy」におけるジーンのシンバルワークは素晴らしく、シンバルそのものがUFOのようにこちらに向かって飛んできた。かれのヘヴィ級の迫力あるドラミング、それとは別の文脈で拮抗するピアノの強度。「Land of Nod」(アンドリュー・ヒル!)ではヒルらしい抽象的で幻惑させられる音の流れ。
「Embracable You」はハービー・ハンコックにインスパイアされてのジェリ・アレンのアレンジをもとにしているとのことで、ここでも素晴らしい知的官能に聴き入ってしまう。「Inception」(マッコイ・タイナー)、そしてアンコールはピアノソロ(エリントン曲だったか)で締めた。
先日のライヴで客席から「モンスター」との掛け声が飛んだ。まさに。
●片倉真由子
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
レイモンド・マクモーリン+片倉真由子@小岩COCHI(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
北川潔『Turning Point』(2017年)
●ジーン・ジャクソン
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
ジーン・ジャクソン(Trio NuYorx)『Power of Love』(JazzTokyo)(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)
松本茜『Memories of You』(2015年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)