あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 芸予諸島の楽園日帰りシーカヤックツーリング&打瀬船調査@音戸

2013年02月23日 | 旅するシーカヤック
2013年2月23日(土) 今朝はまず洗濯から一日が始まった。 京都の大学に通っている次男が引越しをすることになり、妻はその手伝いのために京都に行っているので、今日は私が洗濯担当。
風呂の残り湯をポンプで洗濯機に送り、長男の分と合わせて洗濯機を回す。 脱水が済むとベランダで干すのだが、冬の朝はやはり寒い。

手がかじかみながら一つ一つ干していく。 『ああ、毎日毎日洗濯してもらって、その上、冬には毎朝こんなに寒い思いをさせているのだなあ』 ほんと、妻には感謝である。

***

仕事が忙しく、今日も休日出勤だという長男を見送り、洗濯と食器洗いを終えると、ポットに熱い紅茶を詰め、ドライスーツを準備して出発準備完了。
『さあ、今日も散歩を楽しむとするか』

芸予諸島の中でも、日帰りツーリングエリアとしては一番お気に入りの場所。

カヤックを始めた約20年前から通っているが、自然海岸が続き海もきれいで、様々なバリエーションルートが取れるので、何度来ても飽きることはない。

9時に浜を出発。

今日は、まず北上して島をグルリと廻り、お気に入りのビーチへ。

ここまで、約2時間弱のパドリング。


芸予諸島らしい美しい景色。

11時。 少し早いが、今日のお昼ご飯は高級カップラーメン。



食後は、美しい景色を眺めながらコーヒーを楽しむ。

どんなカフェでも敵わないこの空間。 『いやあ、素晴らしい!』







***

『ようし、そろそろ戻るとするか』

少し春が近付きつつある雰囲気の漂う瀬戸内を、のたりのたりと漕ぎ進む、気持ちの良いパドリング。

今日は、お昼ご飯休憩も入れて約3時間ちょっとのお散歩を楽しんだ。

『あー、最高やったなあ。 ええ休日や』


*** 打瀬船調査@音戸 ***

シーカヤックと道具を潮抜きし、ドライスーツを着替えると、帰りに少し寄り道。 向かうは、音戸大橋のすぐ傍にある『うずしお館』
その目的は、打瀬船の調査である。

下関のシーカヤック仲間から、FaceBookで内田隊長が打瀬船について話題提供しておられ、その中で音戸の打瀬船の話が出たと教えてもらったのである。
その友人からメールで教えてもらった時に、すぐネットで調べてみたがほとんど情報がない。
音戸といえば私の地元のすぐ近く。 これは調べに行くしかないではないか! という訳で、今日のツーリングの帰りに立ち寄ったという訳である。

以前、やはり地元である『豊島の家船』を調べに行ったのも、内田隊長からのメールがきっかけであった。 ほんと、あの時の調査は本当に興味深いものであった。

2Fの展示フロアに上がり、探してみると、

確かに打瀬船の模型と写真が。

瀬戸内で打瀬船といえば、ホクレア号の瀬戸内寄港の時に修復された内海町の打瀬船のイメージしかなかったのだが、地元にもあったとは知らなかった。

なるほど、確かに音戸と打瀬船は関係あるんだな。

***

2Fのフロアには、地元を案内するガイドの方が居られたので、『すみません。 打瀬船についてお伺いしたいんですけど』と聞くと、『え? 何ですかそれ』

『あそこに写真と模型が展示してあるんですけど』と案内すると、『ああ、確かにありますねえ。 でも私は聞いた事はないんですよ』との事。

ここで諦めないのが、俺の持ち味。

『そうですか。 じゃあ、音戸に図書館はありますか?』 『ええ、この先の音戸支所の所にありますよ』 『今日は開いてますか?』 『ええ、土曜日は開いてますよ』
ということで、図書館なら地元の歴史に関する資料があるだろうと期待し、念のために図書館に行ってみる事にした。


図書館に入り、受付の方に『すみません。 打瀬船の事が書かれた本ってありませんか?』と聞くと、『う た せ ぶ ね ですか? それ、何ですか?』
うん、どうやら地元の人もほとんど知らない海の歴史のようである。

写真を見せながら、『漁船の一種です。 あそこにある”うずしお館”に、地元で使っていたという写真と模型が展示してあったんです』
すると、検索システムを使って調べていただいたが、どうやら図書館の所蔵にヒットする本はないらしい。

『わかりました。 じゃあ、地元の歴史関連の本はどこにありますか? ダメ元で調べてみようと思います』 『はい、あちらです。 ご案内します』

***

書棚の前に陣取り、背表紙のタイトルを見ながら、漁業や海に関係ありそうな本を開いては調べていく。 『あ、これじゃあないか!』

<倉橋町史 海と人々のくらし>

よろこび勇んで、受付カウンターに。 『すみません、コピーできますか?』 すると、『打瀬船、引き網の一種なんですね』と言いながら、何冊か事典の様なものに付箋が付いて並んでいるのを指差した。
どうやら、図書館の方々数名が『打瀬船』に関する資料がないか調べていただいてるようだ。

『あ、これはどうもすみません。 お忙しいのにご迷惑をお掛けして』と笑いながら言うと、 『いいえ、良いんですよ。 打瀬船って知らなかったので、調べてみました。 それで、コピーは1枚10円かかりますが』
『はい、お願いします』 書類に必要事項を記入し、コピーをお願いする。

コピーを待つ間、『この倉橋町史が一番詳しく書いてありました』とお話しすると、どうやらそれを受けて倉橋支所にも電話していただいたようで、コピーを渡していただいた後に『倉橋にも電話してみましたが、確かにこの町史が一番詳しいようです。 あちらにも、写真や模型があるそうですよ』
『あ、そうなんですか。 じゃあ今度行ってみます』

いやあ、それにしても、なんとも親切な音戸図書館であった。 感謝!

*** 以下、倉橋町史より抜粋 ***



『風や潮の力を利用して網を引く打瀬網漁は、現在北海道や茨城県の霞ヶ浦、熊本県の一部などを除けば、まったく見られなくなった漁法のひとつであろうが、昭和二十年代前半までは、倉橋でも本浦、室尾を中心にさかんに行われていた』

『この漁法は、倉橋島のなかでも音戸町方面でよりさかんに行われていたらしいのだが、昭和二十年代半ばに動力を備えた小型底曵網船が登場して以降その座をゆずり姿を消した。 打瀬の場合、一艘に四~五人の人間が乗りこむが、小型底曵の場合は一人でも操業ができ、また風打瀬の場合は風のない日には漁ができず、かといって風が強すぎても行えなかった』

『打瀬による漁獲物はエビとトリカイになる。 風のない春から夏にかけての時期、最低でも三潮(一月半)は潮打瀬を行う。 風打瀬は早くて梅雨時以降、本格的には初秋以降の操業となる。 冬も風打瀬であるが、この季節は帆の操作がむつかしかったという』



『打瀬の船は十ヒロから十二ヒロほどの大きさで、大正末期から昭和初期頃にかけての時期で、室尾から本浦にかけて五はい以上操業していたという』

『倉橋島の東側の海域、蒲刈から鹿島にかけても打瀬の漁場だった。 ここへは阿賀(呉市)や音戸からの打瀬も来ており、かつては打瀬の船が何十隻と並び、帆を張って漁をしていたという』

へえ、阿賀にも打瀬船があったんだ! それにしても、何十隻と並んだ打瀬が漁をしている風景、壮観だった事だろう。 見てみたかったものである。

『戦後の一時期 ー 昭和二十三年から二十四年にかけて二年ほどのことだったというが ー 周防灘を越えて大分の別府方面までトリカイを獲りに出かけたという。 これは広島県を通して倉橋に話がきたというが、ちょうど漁船に動力船が普及し始めていた頃のことになる。 大柿町にエンジンをとりつける工場があったというが、この動力船のため別府までの出漁も楽になっていた。 朝出ると夕方には別府に着いていた。 (中略) けれどもほぼこの時期をもって、倉橋の打瀬漁はおわったことになる』

***

ブログを書くと、ゆっくりと風呂に入り、夕食の準備。

今日は、春を感じる幸を、海からちょっとだけいただいた。

ワカメ/若布

この採れたてワカメは、初春のシーカヤックツーリングの楽しみの一つ。
和布蕪/メカブは、店で買うのとは全然味が違うのだ。

サッと湯を注ぐと、美しい色に変わる。

夕食は、ワカメしゃぶしゃぶと、メカブがメイン。

『いただきまーす!』 いやあ、美味い!

仕事から帰ってきた長男にも、メカブをお裾分け。 『お、やっぱこれ旨いねえ。 これを食べると春が来たって感じがするよ』 『そうじゃろう!』

***

打瀬船。 いやあ、それにしても驚いた!
地元の音戸や倉橋、阿賀に打瀬船があり、普段シーカヤックを漕いでいる海域で、昭和二十年代初期まで打瀬網漁が行われていたなんて、これまで全く知らなかった海の歴史。 眼から鱗とはこの事である。

内田隊長、いつも本当にありがとうございます。 隊長からの情報で地元の海にまつわる文化を調査し、全く知らなかった興味深い歴史や事実を多く学んできた。
そしてエクストリームNさん、FaceBookの件、連絡いただきありがとうございました。

この打瀬船の事は、地元の方々もほとんど知らない様子。 室尾は馴染みのある土地でもあり、新たなテーマを見つけることができたので、これからぜひ機会を作って『打瀬船にまつわる ”あるくみるきく”』を再び始めてみようと想う。

いやあ、またまた最高の週末であった!

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