とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

演奏会

2010-08-03 23:14:56 | 日記
演奏会



 ある勤務校で「寺内タケシとブルージーンズ」の演奏会を開いたことがあった。学校代表者が歓迎の挨拶で「エレキギターに対する拒絶反応を示す人がまだいると思いますが……」と述べた。その言葉をじっと聞いていた寺内氏が憤慨した感じで「じゃあ、その拒絶反応とやらをぶっ飛ばすような演奏をしましょう!」と前置きしてものすごいパワーで演奏を始めたのである……。
 私は二十一日の「出雲フィルハーモニー」のプロムナードコンサートの最中にそのことを唐突に思い出した。というのも、クラシック音楽もまた「拒絶反応」を示す人がいるからである。配布されたパンレットの解説や指揮者の中井章徳氏のトークの内容を理解すると、目からウロコが落ちる思いがした。
 ロシアで一番人気のある作家プーシキンの作品を「ロシア・オペラ」にまとめ上げることは「文章表現と音楽表現を一致させる、音楽における『ロシア様式』の追求でもあった」。そして「オペラ」と「バレエ」は「ロシア・オペラ」の発展に伴って独立した道へ進んでいった……。特にこの部分に注目した。文学が基盤となり、そこからロシア独自の舞台芸術が生まれていったのである。表現活動の相互の緊密な繋がり。その点を確認出来たことがその日の演奏の面白さを深めてくれた。
 ……音、文字、所作、形、色彩などと手段は異なっても母体が人間の精神・文化にある限り、表現活動の底には境界線などはないと思った。だから、エレキギターの曲もクラシック音楽もマクロ的な視点から見ると互いに「拒絶」し合うものではないかも知れない。
               (2004投稿)