アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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Nスぺが欠落させた安倍政権「コロナ対策」3つの汚点

2020年08月31日 | コロナ禍と政治・社会

    

 NHKスペシャルは29日と30日の2夜連続で、「パンデミック激動の世界 ウイルス襲来 瀬戸際の132日」と題し、日本で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されてから緊急事態宣言解除までの経過を「検証」しました。

 全体の構成は、西村康稔担当相と「専門家会議」(現「分科会」)の尾身茂氏(写真中)を中心に、「科学的知見」と「政治判断」の“確執”なるものを示したものです。しかしその内容は、およそジャーナリズムの検証とは程遠く、安倍政権・「専門家会議」擁護に終始するものでした。とりわけ問題なのは、「コロナ対策」における安倍政権の3つの重大な誤り・汚点を意図的に欠落させたことです。

 第1に、安倍首相の「東京五輪」への固執が対策を遅らせた問題です。

 番組は1月15日から小池百合子東京都知事が「外出自粛」を要請した3月25日までの現場の混乱した状況を示し、その原因が、10年前(2010年)の「提言」の軽視(この問題は重要)と、「初めての経験」にあるとしました。

 しかし、日本の対策の遅れの背景に安倍首相の「東京五輪」への目論見があり、そのためにPCR検査を抑制した、というのは海外では常識的見方です。
 例えば、2月21日付琉球新報=共同配信は、「安倍政権が東京五輪への影響を恐れるあまり、方策を間違えた」、「安倍晋三首相の最大の関心事は、東京五輪が影響を受けないよう日本国内の感染者数を抑制することにある」(韓国・京郷新聞)などの外国メディアの論評を伝えています。

 「東京五輪」の「1年延期」が決まった3月24日以降、発表される「新規感染者数」が急増し、政府や東京都の姿勢が変わったのは周知の事実です。

 安倍首相の「東京五輪」への固執が初期対策を遅らせた疑惑は濃厚で、徹底的に検証されなければなりません。しかし、Nスぺはそれにはまったく触れませんでした。

 第2に、PCR検査を抑制し、いまだに抜本的に改善しようとしていない安倍政権の責任を完全に棚上げしたことです。

 PCR検査の遅れは客観的事実で、Nスぺはその原因が、体制崩壊を避ける現場(保健所、医療機関)の要請にあり、政府は一貫して「全員検査」を主張した、などとまったくあべこべに描きました。

 安倍政権は当初、PCR検査の必要条件を37・5度以上の発熱が4日以上」としていました。現場はその指針に従っただけです。これが検査を大きく抑制し、「検査難民」を生みました。安倍政権がその要件を削除したのは5月4日のことです。ところが記者会見した加藤勝信厚労相(写真右)は、それは「(現場の)誤解だ」とうそぶき現場に責任転嫁したのです。Nスぺはこの問題も完全に無視しました。

 日本で開発された全自動PCR検査器が、当の日本で7月まで1台も使われていませんでした。開発者は以前、「承認申請しているがまだ許可されていない」と事情を明かしていました(6月9日のニュース)。ところがNスぺは、フランスが買い占めたことが原因だとし、安倍政権を擁護しました。

 第3に、尾身氏をはじめとする「専門家会議」の責任を隠蔽したことです。

 安倍政権の意向に応じてPCR検査を抑制してきた張本人は「専門家会議」(とりわけ厚労省クラスター対策室)です。責任者の押谷仁氏は、PCR検査を拡大すれば医療崩壊を招くから抑えると公言していました(3月22日のNスぺ)。

 本庶佑氏(ノーベル生理学・医学賞受賞)はこう指摘しています。
 「日本ではPCR検査の体制づくりが出遅れ…いまだに政府は前向きとは言えません。その背景には…国の戦略を担った「専門家会議」の影響が大きかったと思います。…専門家会議のメンバーは公衆衛生学の専門家に偏っていました。その結果、PCR検査を進めれば、患者が増え、医療崩壊を招くので適切ではないという社会医学的な考え方が優先された」(「文藝春秋」8月号)

 そもそも、政府の「専門家会議」はきわめて偏った人選です。たとえば、初期から一貫してPCR検査の重要性を強調している児玉龍彦東大名誉教授や上昌広医師らの主張はまったく取り上げられていません。

 現在の「分科会」も、政府との打ち合わせによって先に結論ありきで、自由に発言できる状況ではないというメンバーの内部告発(8月4日のブログ参照)も、Nスぺは完全に無視しました。

 以上の3点は、けっして過去の話ではありません。まさに現在進行形で、これからの政府のコロナ対策を規定する重大な問題です。それだけに絶対に見過ごすことはできません。


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