アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

差別を上塗りするNHK(広島)の“謝罪文”

2020年08月26日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

    
 NHK広島放送局が「ひろしまタイムライン」なる企画で在日コリアンに対するヘイト・差別を行い問題になっていることについて(昨日25日のブログ参照)、同局は24日、HPに“謝罪文”を載せました。
 その要旨は、次の通りです。

< 6月16日および8月20日のツイートについて、多くの方々から、さまざまなご意見をいただきました。「差別を助長しているのではないか」というご批判も多数いただきました。戦争の時代に中学1年生が見聞きしたことを、十分な説明なしに発信することで、現代の視聴者のみなさまがどのように受け止めるかについての配慮が不十分だったと考えています。

 手記を提供してくれた方が、1945年当時に抱いた思いを、現在も持っているかのような誤解を生み、プロジェクトに参加している高校生など関係者のみなさんにも、ご迷惑をおかけしたことをおわびいたします。

 (中略―企画の趣旨の繰り返し)

 ツイートはすべて、NHK広島放送局の責任で行っています。今後は、被爆体験の継承というプロジェクト本来の目的を的確に果たしていくため、必要に応じて注釈をつける、出典を明らかにするなどの対応を取り、配慮に欠けたり、誤解が生じたりすることがないように努めます。>

 一読して明白なのは、NHKが「おわび」しているのは、「手記を提供した方」(新井俊一郎氏)と、「プロジェクトに参加している関係者」であり、肝心の被害者・在日コリアンに対する謝罪は一言もないことです。不誠実極まりありません。

 それでも「配慮が不十分だった」「誤解が生じた」ことは認めているのですから、少なくとも問題のツイートは直ちに削除すべきです。しかし、それには全く触れていません。これは事実上、問題のツイートは残すと宣言しているに等しいものです。これでは謝罪ではなくて開き直りです。

 上掲文章のもう1つの特徴は、問題のツイートがヘイト・差別であることについての認識・自覚がいまだにまったくないことです(昨日の拙ブログで述べた第3、第4の問題)。

 一方、上掲文章は、「戦争や原爆について考えていただく取り組み」「被爆体験の継承というプロジェクトの目的を果たす」などと繰り返しています。これは何を意味しているでしょうか。

 在日コリアンが戦前・戦中・戦後におかれている苦難・差別は、日本の植民地支配の結果にほかなりません。それは日本の加害責任です。NHKにはその認識がまったくありません。その一方で「戦争や原爆」の「体験の継承」を強調する。それはすなわち、NHKが「継承」するという「戦争や原爆」は、その被害の側面だけであり、日本の加害の側面は棚上げする、ということではないでしょうか。

 これは、NHKに限らず、「戦争や原爆」の「継承」におけるきわめて重大な誤謬・欠陥です。今回のツイート問題の根源は、実はここにあるのではないでしょうか。

 NHK(広島)は、ヘイトスピーチ・差別について、戦争・植民地支配の日本の加害責任について学習し直し、自らの過ちを認め、被害を受けた在日コリアンに謝罪し、問題のツイートを直ちに削除すべきです。


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