アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

黙過できないNHK(広島)の在日コリアン差別

2020年08月25日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

    
 23日付の地方紙各紙(共同配信)で、NHK広島放送局(写真中)の企画で在日コリアンに対する重大なヘイト・差別が行われていたことを知りました。

 問題の企画は、「戦争・原爆の悲惨さや戦後の厳しい現実」を若い世代に「SNSを通じて知ってもらう」(同局HP)という「1945ひろしまタイムライン」と称する企画です。
 「1945年の広島を生きた3人の日々」を3つのツイッターアカウントでことし3月から発信。その中で、8月20日、「中学一年生の「シュン」」が、埼玉へ向かう列車でツイートした形をとり、次のように発信しました。

 < 朝鮮人だ!!
 大阪駅で戦勝国となった朝鮮人の群衆が、列車に乗り込んでくる!
 「俺たちは戦勝国民だ!敗戦国は出て行け!」
 圧倒的な威力と迫力。
 怒鳴りながら超満員の列車の窓という窓を叩き割っていく
 そして、なんと座っていた先客を放り出し、割れた窓から仲間の全員がなだれ込んできた!
 あまりのやるせなさに、涙が止まらない。
 負けた復員兵は同じ日本人を突き飛ばし、戦勝国民の一団は乗客を窓から放り投げた
 誰も抵抗出来ない。悔しい…! >

 在日朝鮮人が暴力的だと描き、反感を掻き立てていることは一目瞭然です。

 同局に、「ヘイトをやめよ」など批判と謝罪・削除を求める声が集中しました。これに対し同局は、「手記とご本人(「シュン」のモデルとなった新井俊一郎氏―引用者)がインタビューで使用していた実際の表現にならって掲載した」(同局HP)と弁明。「広報担当者は取材に「偏見や差別との指摘があるが、そういう意図は全くない」と述べ、投稿を削除する考えはないと説明」(23日付共同配信記事)しました。

 24日午前、私も同局へ電話で抗議し、謝罪と削除を要求しました。が、「削除する考えがないことは変わっていない」との返事。電話は回答責任のある広報部ではなく、「意見を聞くだけ」の「ふれあいセンター」なるところへ回されました。抗議の電話・メールは広島局だけでなく、東京の本局(写真右)にも寄せられているといいます。

 問題は多岐にわたっています。

 第1に、問題のツイートにはきわめて恣意性があることです。

 同局はこの企画について、「終戦の年に広島で書かれた日記をもとに、75年前の人の暮らしや気持ちをTwitterで毎日発信」(同局HP)するものだと公言し、放送でもそうPRしてきました。

 ところが問題の8月20日のツイートは、新井氏の日記によるものではありません。同局自身、「ご本人の日記は、8月17日~27日まで空白です」(HP)と認めています。そのうえで、「8月15日~21日までのツイートは、後年ご本人が書かれた手記インタビュー取材をもとに掲載しています」(HP)とのこと。この点ですでに上記の企画趣旨を逸脱しています。

 同局はツイートの内容、表現はすべて新井氏本人によるものだとしていますが、そうだとしてもそれは「後年」のものであり、しかも「インタビュー取材」という客観的検証が困難なものも含まれています。その過程でNHKの恣意的な表現、ニュアンスが混入した可能性は否定できません。

 第2に、仮にツイートの内容・表現が新井氏の述べた通りだとしても、それをそのまま載せていいわけではありません。なぜなら、当時13歳の少年の記憶を後年思い出したものに、記憶違い、認識の誤り、不十分さがあることは避けられないからです。例えば、ツイートでは朝鮮人を「戦勝国民」と表現していますが、これは明白な誤りです(当時在日コリアンは不当にも「日本国民」とされていた)。
 注釈などで訂正することもせず、誤りをそのまま流すのはメディアとしての責任放棄にほかなりません。

 第3に、「偏見や差別の意図は全くない」という同局の釈明自体の重大性です。

 偏見や差別を「意図」的に行ったと公言するは確信的レイシストくらいでしょう。たいがいは「意図はない」と言います。報道機関であればなおさらです。
 しかし、それが問題なのです。「意図はない」といいながら実際は重大な差別発言、ヘイトスピーチを行っている。その“無意識”の差別こそが大問題なのです。

 偏見・差別かどうかはそれを行った者(報道機関)の「意図」で決まることではありません。言論・行為の結果として生じることであり、それを判断するのは偏見や差別の被害者です。

 今回の場合、このツイートの内容が、在日朝鮮・韓国人への偏見・差別を助長する結果を生んでいることは明白です。NHKは公共の電波でヘイトスピーチに加担した(行った)責任を取らねばなりません。この点についてNHK(広島放送局だけでなく東京本局を含め)は責任ある見解を明確に示さねばなりません。

 第4に、このツイートが今日の日本社会でいかに重大な犯罪的意味をもつか、その認識・自覚がNHKにはまったく欠落していることです。

 在日コリアンに対する差別はまさに今日の日本社会の重大問題です。その典型は朝鮮学校の児童・生徒・学生に対する差別です。幼児教育・高校無償化からの朝鮮学校排除、コロナ禍の支援金制度からの朝鮮大学の除外など具体例は山積しています。

 広島の朝鮮学校の生徒たちもその差別の犠牲者であり、裁判にもなっています。よもやNHK広島がそのことを知らないわけではないでしょう。在日コリアン差別の一掃が日本社会・日本人にとって喫緊の重要課題になっている、まさにその中で起こったのが今回の問題です。それが在日差別根絶にとっていかに重大な障害・逆流になるか。NHKにその認識が微塵でもあれば、問題のツイートを垂れ流すことはできなかったはずです。

 以上、あらゆる角度からみて、問題のツイートをこのまま存続させることは許されません。NHKは謝罪して即刻削除すべきです。

ブログをアップしたあと、NHK広島が24日付でHPに“謝罪文”を掲載したことがわかりました。これについてはあす(26日)ブログで書きます。


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