そもそも何故『銀二貫』を観たいと思ったかというと…それは、華形ひかるくんが出演するから。
みつるくんは、いろいろな組に呼ばれていますが…東京には来てくれないのですよ
ならば、こちらから行くしかないでしょう
(次の舞台も本公演ではなく、月組の全ツか宙組の博多座のような気がするんですよね…)
みつるくんをバウホールで拝見するのは、3年前の『近松 恋の道行』以来。
※以下、ネタバレしています
幕が上がると、吹雪のなか、まず、みつるくんが登場します
みつるくんは寒天問屋・井川屋の主人の和助。
髪に白いものが混じっているので、話の初めは30代の後半でそこから20年余の物語かな?と思います。(原作を読めば明らかになりますね)
若手中心のバウホール公演だと、やはり上手いのがわかります
優等生的に上手いのではなく、緩急自在なんですね興奮して草履を脱ぎ捨てて帳場にかけ上がったり、寒天の味を確かめて善次郎とタイミングを合わせてにこっとしたり、急に耳の遠い年寄りのふりをしたり…
それに、たくさん歌ってくれて、久しぶりにみつるくんの歌声も堪能出来ました
和助が銀二貫で鶴之輔の命を買い受けるところから、物語は始まります。
物語の最後、和助が番頭の善次郎と、「わしはよい買い物をしたな」「安い買い物でしたね」と会話をかわすのですが(文字にするとすごく冷酷に感じますねぇでも本当はしみじみと暖かい)、和助は鶴之輔を助けて良かったというより、鶴之輔(松吉)の数奇な人生の手助けをできて心底、喜んでいるのだろうな、と本当に暖かい気持ちになりました
そして、みつるくんに輪をかけて上手いのが、英真なおきさん。井川屋の番頭の善次郎です。
英真さんとみつるくんとのやりとりが芝居を引き締め、分別ある大人の雰囲気を醸し出していました。
そして、雪組の日本ものに欠かせないおふたり。
奏乃はるとくんは、真帆の父で料理人の嘉平。
松吉に寒天問屋の奉公人ならば、寒天を好きになれ、と教える人物です。
料理人として腕もプライドも持っている厳しい人物ですが、娘の真帆には甘い父親です
そして、香綾しずるくん。
冒頭では切られる鶴之輔の父。大切な言葉を残す絶命の場面は大袈裟にならず、さすがに上級生
二幕では腕のいい寒天職人の半兵衛。
半兵衛の寒天のおかげで、井川屋は潰れずにすみました。松吉の、今で言うところの寒天の新商品開発に手を貸してくれます。
舞台は江戸時代ですが、舞台から受け取ったメッセージは、現代の私たちにも不可欠な不偏的なものだったのでした。
人というものは、周りのおかげさまで生きているし、そのおかげに応えるために生き続けなくては。
自分のために泣いてくれるひとがいたら、なおさら。
(終わり)