浪華人情物語
『銀二貫 ―梅が枝の花かんざし― 』
※ネタバレしています
バウホールで観てきました。
予想していた以上の見ごたえのある舞台でした。
生き続けろ、どんなことがあっても… という鶴之輔の父の最期の言葉がテーマになっているように思います。
その他にも、もうええよ… という言葉。もう幸せになってええよ…
人は幸せになるために生きなあかん。
愛しゅうて愛しゅうて、何もかもが愛しいんだす…
いろいろとキーワードになる台詞(うろ覚え)が出てきて、いちいち素直に納得したのでした。
それとやはり、 銀二貫 ですね。銀二貫についてのエピソードは、3回出てくるのですが、最初に鶴之輔の命を救ったのにはじまり、すべて私利私欲のためには使われません。特に2回目は天満宮に寄進するために銀二貫を貯めるのに19年もかかったというのに、それを人の為に快く用立ててやるその潔さ。
人情 というひとことでは片付けられない、大きな人間の力を感じました。
曾根崎心中の人形浄瑠璃や、物売りとの値段のかけひきや、噂話に花を咲かせる町娘たちなど、一見、話の本筋から離れた場面も多々登場しますが、見終わってみると、大坂の世相やら、当時の商家の事情やらをほんのりと浮き立たせていて、無駄なせりふは一言もないのでした。
ひとつの山を越えるとまた一山…というふうに人間の力を試すようなエピソードの連続なのですが、きちんと収まるべきところに収まり、とても清々しい気持ちでバウホールをあとに出来ました
私の後ろに座っていたお嬢さん方が「谷先生の日本ものにはハズレがないね」としゃべり合っているのを聞いて、ひそかに頷いたのでした。
大阪というか関西の方なら、観劇していてすごく共感できる部分が多いのだと思います。
ところが東北人の悲しさ
ああ、舞台から置いていかれているな…と客観的な見方になってしまう部分もあったのでした…
パンフレットの谷先生の言葉によりますと…原作をけっこういじっているそうですので…これは是非に高田郁氏の原作を読みたいと思います
さて、初主演の月城かなとくん。
よい作品に恵まれて、おめでとうございます
おそらく商家の手代よりは、きりりとした武士の方が似合うのだとは思いますが、初主演をしっかりと果たしていたと思います。
自分は天涯孤独の身だと真帆に告げるくだりでは、真帆といっしょの気持ちになり、うるっとなってしまいました。
生き続けることの意味が少しわかった気がします…と亡き父に語りかけるときに「父上」と口に出していて、やはり流れる血は武士のそれであり、武士を捨てて 松吉 となってしまった鶴之輔の心情をもう少し掘り下げて欲しかったかな…と感じました。
真帆への不器用な愛に、がんばれと応援する気持ちが高まったり、松吉の成長を見届けるおばちゃんの気分でしたね
長身で端正な顔立ちで、宝塚の伝統的な二枚目が似合う月城かなとくん。
組替などなく、このまま 日本ものの雪組 の伝統を引き継いで大きなスターさんになってね
相手役の真帆は有沙瞳ちゃん。
『伯爵令嬢』や『ルパン三世』で実力のある若手娘役が出てきたなぁ…と思いましたが…今回は私は声がなじめませんでした
子供時代のキンキン声、大人になってからも声のトーンが高過ぎるような…
声質もあるでしょうが、『星逢一夜』での咲妃みゆちゃんや透水さらさちゃんの子役と比べると、やはりまだまだ。
研4かな?
芝居そのものは上手いと思うから、また役に恵まれるといいですね
若手では、井川屋の奉公人仲間・梅吉の久城あすくんは上手いと思いました。
浄瑠璃の場面の歌い手もやっていましたね。
梅吉の生き方もひとつの物語になりますね
亀吉の真條まからくんも大役を頑張っていました(おそらくこの人の台詞をちゃんと聞くのは初めてかも)
船頭の喜六の煌羽レオくんはいなせで見た目も良く、口跡も爽やか
娘役さんたちは、日本ものに慣れているだけあって、着物の芝居や踊りは上手いのですが…やっぱり声が…男役との対比もあるのでしょうが、わざと作ったような高いトーンでのせりふは、耳障りなときもあったのでした
長くなりましたので、ベテラン陣については、改めて次に書きます