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日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

弥生の空は

2013-03-29 | Flower

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桜を求めて歩く人が絶えない。
サクラの「サ」は田の神、「クラ」は田の神が座す場所。
桜が咲くと木の下に集まり
田の神の来訪を祝った。
それが花見の始まりといわれる。





2sakura
桜を愛したさすらいの歌人、西行法師。
北面の武士だった佐藤義清は23歳で出家。西行と名のる。同僚には平清盛がいた。
華美を捨て、家族と別れ花を求めて放浪の旅に出る。

   「願はくば花の下にて春死なむ 
          その如月の望月の頃」

如月の望月は2月15日。釈迦入滅の日である。その願いどおり2月16日に没した。

   「花に染む心のいかで残りけん 
       捨て果ててきと思ふわが身に」

貴族社会の政争が強まる世であった時に
この世のものではない美しさで西行の心をとらえた桜。
伝え聞く世の苦しみと、捨てきれない自身の煩悩をおぼえながらも、なお桜に憧れるのだった。

3sakura 
散りはじめた桜のはなびらが地面を覆う。

      花

   花がなければ
   世界はさびしいか
   ならば
   それがないために
   かく荒寥としている
   というものは
   なにか        川崎洋                                                                                    


桜など

2013-03-28 | Flower

Sakura_grass


気象が定まらないうつろな春。

花はそれでもその季節の顔を確実に見せてくれる。

今年は寒い春と暖かい春と。

まるで人のこころのように。

使用した花材
緋桜、チューリップ、ビバーナム、レースフラワー、ゼンマイ、アスチルベ、ゲイラックス、サンセベリア、スチールグラス


こぼれてきた光

2013-03-19 | Flower

Beranda



ベランダの隅に陽が射した。

毎日のことなのになぜか光がこぼれてきたような気がした瞬間。

淡い黄色の花なら光をさらに明るくする。

春が意志を与えた光。

使用した花材
チューリップ、パンジー、ジャスミン、アイビー


花はあふれているけれど

2013-03-02 | Flower

春の強風が木の葉を揺らしている。
いつになったら、と春の到来を待っていた。
フラワーショップでは、心がはずむような明るい花が並んでいる。
でも枝や葉が恋しい。
あるだけの葉を使って。



使用した花材
チューリップ(フレミングフラグ)、トルコキキョウ、アネモネ、レースフラワー、こでまり、スチールグラス


ピンポンマム(スプレー)

2013-01-11 | Flower

Pinponmam

 

ピンポン玉のような小菊が1本に沢山ついているボリューム感あるピンポンマム。
マムは菊、スプレーは枝分れを意味する。

縦にぽこぽこと咲いていたこのマムは神楽鈴のような形と丸みが可愛らしくて思わず注文。
量感あるように生けてみた。
(神楽鈴とは巫女さんが舞う時に使用する鈴のこと)

今年はゆったりとお正月気分が長引いためずらしい年。
空気は今日もとても冷たかったけれど
目に映る冬の木々は清々しい風景を見せていた。

使用した花材◆ピンポンマム、パフィオ、カラー、ゲイラックス、アンスリュームの葉


菊 ゼンブラライム

2012-12-06 | Flower

Zenburaraimu

ダリアのような大きさと形。
ライム色がはなびらの縁を囲む。

キクの古い呼び名「クク」は「くくる」から由来する。
小さなはなびらをしめくくっているように咲く形から統一、統御などの意味を持つという。

一緒に合わせたのは大きな葉のユーカリとパールアカシア。

中村勘三郎さんが昨日亡くなった。
まだこれから本物の芸を見られる私たちの喜びを置き去りにして。
もう体の苦しみが終わったのなら、せめてあの世で好きな芸のために邁進を。


集う花は秋の色

2012-11-16 | Flower

Aki_mix

 

抜けるような青空に秋の陽射し。
我が家に入るひかりは弱く、太陽の輝きが遠く感じる。
この頃になると
いつも聴きたくなるビリー・ホリディを流して花を入れた。

 

使用した花
ダリア(2種)、菊、ブルースター、クリスマスブッシュ、葉ボタン、木イチゴ、ヒペリカムの枝


菊の表情

2012-11-15 | Flower

秋が深まり菊の季節になった。
巣鴨にでかけた際にみかけた菊。
丹精を込めて育てられた鉢に咲いた大輪の菊。



3kiku


キッチュな菊人形

極彩色で彩られたコーナーがあった。
この人形は回転しているので後姿も見ることができる。
(見た瞬間、度肝を抜かれたが)


菊人形は200年ほど前に巣鴨の植木職人が菊細工として始めたのが起こり。
その作り手は「菊師」と呼ばれる。


黒ほおずき

2012-10-12 | Flower

Kurohozuki 
黒色と形がほおずきに似ていることから名づけられた黒ほおずき。

漢字でほおずきを「鬼灯」と書くが
毒を秘めているかのようなこの実は華やかな花にはない魅力がある。

器はグムンドナーの「緑の炎」シリーズの花瓶。
主張が強く見える花瓶だがどんな花を生けても合う。 


使用した花材
黒ほおずき、菊、ピンポンマム(2種)、黒とうがらし、ユーカリ




グリーンで

2012-09-16 | Flower

G_arrange

 

朝夕の風は涼しいのにまだ残暑が続く。

せめて部屋にはグリーンで。

ここに涼しい風はまだ届かない。


使用した花材
ユーカリテトラゴナ(白い実)、サンキライ、ヒペリカム、木イチゴ、ワイルドオーツ、フェイジョア


午後4時の花 オシロイバナ

2012-09-14 | Flower

   

幼い時から見慣れている白粉花(オシロイバナ)
夕刻から咲くため、別名を「夕化粧」ともいう。先人たちが名づけた詩的な名称だ。
英名は「Four o'clock/午後4時花」といわれる。

元は赤と黄の単色が交配したものなのか
同じ模様の花がふたつとして見当たらない。
こんな小さな花にも運命というものがあるらしい。


風船かずら

2012-08-18 | Flower

 近頃、緑のカーテンとしてよく見かける風船かずら。
葉は明るめのグリーンで涼しげ。

別名はBallon vine(バルーンヴァイン)。vineはつる性植物のこと。
蔓が絡み、実が風船のような性質から生まれた花言葉は「御身と共に飛行せん」



    花の生命の 散る時は
    あなたと一緒に 夢に飛ぶ
     風船かずらの 花ことば
    風船かずらは ゆらゆらと
     青いその実が 風に舞う

                  野口家嗣(のぐちいえつぐ)「花詩集」より 


上野 不忍池のハス

2012-08-07 | Flower

昨日行った上野恩賜公園の不忍池に咲くハスの花。
広い池は大きなハスの葉に一面がおおわれて太陽を浴びている。

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泥土からこんなに美しい花を咲かせる蓮の花。
光の象徴でもあり、極楽浄土のシンボルともいわれる。
そのため蓮の台(うてな)に仏様が座しているのは
極楽から慈悲をもたらしている表現だとされる。








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神聖と神秘の象徴として崇拝の対象となってきた蓮。

英名はロータス。ラテン語の蓮、睡蓮をさす言葉から名づけられた。
和名はハチスとも言う。実が蜂の巣に似ていることに由来する。







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朝の空気の中で何輪も咲く蓮の花たち。

中国では蓮を総称した場合「荷」と書くという。
荷風は蓮の上に吹く風の呼び名。
自然をみつめた目から美しいことばが生まれた。






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つぼみが葉の間から立っている。じきに開く予感。

ラオスに伝わる民話では、一人の修験者(しゅげんじゃ)が
池で水浴をしているそばに一輪のつぼみが良い香りを放っていた。
修験者がそのつぼみを仏前に供えたところ蓮のつぼみは女の子に変わっていた。
蓮の精の伝説だという。




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ギリシャの伝説ではオデュッセウスがトロイの戦いを終え、
故郷に帰る途中でロータスの咲き誇る国でロータスの実を食べたが
部下たちが故郷へ帰ることを忘れたので、急きょ船に乗せ脱出したという。
このことからlotas-land ロータスランド。
すなわち憂いのない国、桃源郷という言葉が生まれた。







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朝は晴れていたが雨が急に振り出した。
太陽の下で咲く蓮とは又違う表情の池。

葉の上にしずくが水玉になって光る。
ころころとあちこちに大きさを変えて動く様子は様々な表情を見せてくれる。
万葉集では葉の上のしずくを女性に例えた歌が残されている。






葉に降った雨がたまり、葉が重みに支えられなくなると茎がたわんで水がこぼれる。
ゆらりと葉が元にもどる動きがあちらもこちらも。
豊かな表情で池は輝いていた。


夏ツバキ

2012-06-17 | Flower

朝に咲き夕刻には散ってしまう儚い花、夏ツバキ。
6~7月にかけて椿に似た花を咲かせることから名づけられた。
別名で沙羅の木(さらのき)とも呼ばれる。

インドの聖樹・沙羅双樹と似ているらしいことから混同されるが
日本の土壌では育たないため、この夏ツバキは沙羅双樹とは別種である。

    祇園精舎の鐘の声
    諸行無常の響あり
    沙羅双樹の花の色
    盛者必衰の理(ことわり)をあらはす

琵琶法師が哀しく語った「平家物語」の冒頭では世の無常を落下する花にたとえた。
その沙羅双樹は夏ツバキではないかといわれる。 

そしてこの夏ツバキを愛した作家・森鴎外が詩に描いた風情。

         褐色の根府川石(ねぶかわいし)に
         白き花はたと落ちたり、
         ありとしも青ばがくれに
         見えざりしさらの木の花。

長くはとどまってくれない夏ツバキはひととき人を魅了し
静かに落ちて、木に咲いていた姿とは又違う風景を見せてくれる。