日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

夏ツバキ

2012-06-17 | Flower

朝に咲き夕刻には散ってしまう儚い花、夏ツバキ。
6~7月にかけて椿に似た花を咲かせることから名づけられた。
別名で沙羅の木(さらのき)とも呼ばれる。

インドの聖樹・沙羅双樹と似ているらしいことから混同されるが
日本の土壌では育たないため、この夏ツバキは沙羅双樹とは別種である。

    祇園精舎の鐘の声
    諸行無常の響あり
    沙羅双樹の花の色
    盛者必衰の理(ことわり)をあらはす

琵琶法師が哀しく語った「平家物語」の冒頭では世の無常を落下する花にたとえた。
その沙羅双樹は夏ツバキではないかといわれる。 

そしてこの夏ツバキを愛した作家・森鴎外が詩に描いた風情。

         褐色の根府川石(ねぶかわいし)に
         白き花はたと落ちたり、
         ありとしも青ばがくれに
         見えざりしさらの木の花。

長くはとどまってくれない夏ツバキはひととき人を魅了し
静かに落ちて、木に咲いていた姿とは又違う風景を見せてくれる。


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